ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第17章 繋風
……
…………
………………
「……∑はっ!!」
目を覚ますと、木箱が並べられた上で毛布でぐるぐる巻きにされていた。
起き上がると、消毒液の匂いが鼻に届く。どうやら手当をされているらしい。
「あれ…私…」
記憶をたどって行くと、ローに抱擁されて安心感と疲労感と負傷のダメージとで意識を手放してしまった事を思い出した。
「あ、リン。目が覚めたか!体の具合はどうだ?」
チョッパーがテクテクとやってくる。
「ありがとう。頭も軽いし大丈夫。ていうか、このどんちゃん騒ぎは一体なに…」
そう、リンの視線の先には飲み食いする海賊と海兵と子供たちが。皆揃って笑顔である。
「今は宴だ!子供たちもローのおかげで薬が抜けたしな!サンジの特性スープ、持ってきてやるからちょっと待っててくれ」
テテテテ、と走っていくチョッパー。
「モフモフ…ベポに会いたい…」
チョッパーの後ろ姿を見て、大好きな仲間の白熊を思い出す。アイアイーっ!と声が聞こえたような気がした。
チョッパーが持ってきてくれたスープを飲み、体も温まったところで毛布から出てローを探す。すると、宴の集団から少し離れたところにいた。近くにスモーカーの姿も見える。
ローは歩いてくるリンを見つけると、スープの入った器を煽り、カランと捨てた。
『俺はグリーンビットへ向かうつもりだが…さて、麦わら屋の一味は俺の手に負えるかどうか……!!』
風に乗って聞こえてきた、スモーカーに今後の進路を示しているローの魂胆に、リンはクスリと小さく笑いながら歩みをとめずに2人に近づいていった。
「リン、起きたか。体はどうだ」
「さっきより全然平気。ごめん、ぶっ倒れて。スタミナつけてきたはずなんだけどなー」
「スタミナの問題じゃねぇだろ…」
ローが呆れたようなため息をついているが気にせず、リンはスモーカーに視線を向けた。
「……姫が海賊になるたぁ、あの国の奴らも腰抜かすぞ」
「へへ、お姫様が海賊になるなんて面白いでしょ。まぁ安心してスモーカー。」
「馬鹿野郎、安心できるか。今度会ったら捕まえてやる」
「うん!その怖い顔で捕まえに来て。捕まらないけど」
スモーカーは小さく笑うと立ち上がり、リンの頭にポンと手を乗せて海軍の集団の方へ歩いていった。