ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第10章 ありきたり風
「船長最近すごく楽しそうだ。お前のおかげかな」
急に優しい声色でそういうものだから、リンはキョトンとしてしまった。
ペンギンにひょいと持ち上げられ、腕に抱かれる。
「あの人も、いろいろ抱え込んでんだ。飄々としているようで、実は寂しがりだったり、とかな」
おれの推測だが、とペンギンは付け足す。
側にいるから薄々感じ取るものもあるらしい。
リンは身をもって感じていたが。
「ま、それもお前が来てからは殆ど感じなくなったんだ。ありがとな」
ペンギンの手も心地よく、喉がゴロゴロ鳴る。
それをお礼の返事とした。
「さ、そろそろ船長のとこ行かないと、おれがバラされるからな」
ペンギンは笑って、リンを床に降ろした。
甲板に戻ると、案の定ベポの腹に寄りかかり少し不機嫌そうなローがいた。
リンは歩いて行き、ローの足の上に乗った。
「…リン」
「にゃ」
「お前早く戻れよ」
「Σに″ゃ⁈(んな無茶な)」
「猫じゃダメだ。足りない」
大きな掌で、頭を撫でられる。
その手は人を殺したり生かしたりする手だが、リンにとっては暖かく優しい手だった。
「にゃう」
リンはひとしきり撫でられた後、スタッとローの足から降り、甲板をペシペシと叩いて、寝転がれ、とジェスチャーをする。
「?」
ローは寝転がる。
リンはローの唇をぺろっと舐めた。
「…お前」
「にゃー」
リンは不意打ちしてやったぜ!とどこか誇らしげな顔だった。
「ったく、可愛いことしてくれやがる。猫だからってリンはリンだ。容赦しねぇぞ?」
そう言って抱き上げられ、それからずっとローと過ごす羽目になった。
どこへ行くにも、腕から逃れられずに抵抗することを諦めた。
「にゃー…」
「船長猫も好きだったんですね」
シャチがその光景を見てほんわかしたことを言う。
「溺愛すんのはこいつ限定だ」
恥ずかしいことをサラリと言ったがシャチはそっすか〜となにも気付かない様子で去っていった。
「…」
「なんだ、疲れたか?」
こくりと頷くと、ローは服のフードへリンを入れた。
「⁈」
「そこなら寝られるだろ」