ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第10章 ありきたり風
リンはとぼとぼと食堂へ戻った。なぜかローはもういなかったので、残りの朝ごはんを食べて甲板に出ると、そこにはイケメン…猫じゃらしを手に無駄にかっこいい立ち方をしているローがいた。
「これがキャラ崩壊ってやつにゃ」
「ほら、こっち来いリン」
ふわふわと猫じゃらしを振られれば、反射的に反応してしまう。簡単にローの腕の中へとリンは収まってしまった。
「にゃ💢」
「くそっ…おれのハートがカウンターショック…‼︎」
「もう黙れにゃ」
てし、とローの頭にチョップを食らわしたはずだが、柔らかい感触に腕から手の変化に気づく。
「手が…」
「…肉球…だと…⁉︎」
手が猫のようになってしまったのだ。
ローはリンの肉球でふにふにと楽しみ始めた。
その時、ペンギンが息を切らせてやってきた。
「リン!お前アレどれくらい飲んだ?」
「…ぜんぶにゃ」
そう言うと、ペンギンは目頭を押さえた。
「船長…それ、多分一回完全に猫になります」
「…最高じゃねぇか」
ローはニヤリと笑う。リンは嫌な予感しかしていなかった。
「まぁ、明日になりゃ治ると思うんで」
「まかせろ、こいつの世話はナニからナニまで全部おれがしてやる」
リンは、明日まで平穏は訪れないことを悟った。
その時、にゅっと顔からなにかが生えた。
「…ひげにゃ」
「似合うぞ」
「嬉しくないにゃ‼︎」
びゅっと猫パンチを喰らわそうとするが、簡単に受け止められてしまう。
「にゃー…」
「え、おい…」
「にゃ?」
怒っていると、ローが唖然としている。
リンも異変にすぐ気が付いた。ローがだんだん大きくなっていく。
「にゃ⁈」
リンは完全な猫になってしまった。
ツヤツヤの黒い毛の猫に。
「にゃ⁈」
ひょいと持ち上げられ、ローの腕の中に抱かれる。
「安心しろ、お前を危険には晒さねぇ」
すでにお前の腕の中ということが危険だ‼︎と突っ込みたかったがそれは出来なかった。どうやら人語も喋れないらしい。
「にゃにゃ…(誰得…)」
「俺得だ」
「⁈」
独り言なのか、言ったことがわかるのかわからないが、確かに俺得と言ったローに不安要素しかなかった。