ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第9章 花風*
口を離すとトロンとしたリンの目があった。
自分がこうさせたのだという背徳感と愛しさとその他諸々の感情がローの理性をどんどん無くしていく。
だがリンの口からはそんなこと全然関係ないことが飛び出してきたのだ。
「そういえば、なんで出会った時私の個人情報知ってたんだ?」
「…気まぐれの賜物だ」
「…ローの気まぐれは時々すごいよね」
ふんふんと感心しているのかそうでないのかわからない頷きをした後、リンはローの頰に手を添える。
「まぁなんでもいいや…ロー、ありがと」
にこっと笑うとローがへなっと首元に顔を埋めてきた。
「ロー、くすぐったい」
「お前は…ったく、もうとまんねぇから覚悟しとけよ」
今度は勢いよく起き上がり立ったかと思うとガッと担ぎ上げられベッドに降ろされた。
「?、?!、???」
「おれだけが翻弄されてるみてぇじゃねぇか…」
上から覆い被さってきたローが耳元で切なそうな声で囁く。
しかしリンも反撃に出る。
自分は風になりローの下から抜け出しローをくるっと仰向きにしたところで上に乗り、先ほど自分がされていた状態に持ち込む。
「よく言う。私がローの行動にどれだけ悩まされたかわからないだろ?いきなりキ、キスしてきたり抱きついてきたり…でも嫌じゃないし…心臓が潰されそうな感じになって…全部初めてで…その…あーもうわかんないっ」
今度は自分が恥ずかしいことを言っていることに気付いたリンが、へなっとローの胸に顔を埋める番だった。
「…じゃあ特別視ってのは、おれのことが好きで好きでたまらないって意味でいいんだな」
上から降ってきた声に、こくりと頷く。
すると、ローは小さく笑った。
「…互いに初めて、か。なんかの小説だな」
「ロー初めてなのか?」
予想外の言葉に顔を上げると、優しく、しかし何処か妖艶さも含んだローの目と視線が絡む。
「おれは愛だの恋だの興味なかった。お前が現れるまではな。まぁあっちの経験はあるが」
リンは目を半分閉じ、呆れた表情を作る。
「…そういうの普通に言うよね。でもローのそういうとこが好きだ」
「言ってもそんなこと気にしねぇんだろ?お前のそういうとこが大好きだ」
二人はどちらともなく笑い、きつく抱きしめ合った。