ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第9章 花風*
「好き…だけど」
ペンギンの問いにそう言うと、ペンギンがリンの頭に手を乗せてニカっと笑う。
「じゃあ良いんじゃねえのか?そのままで」
「「は?」」
リンはともかく、シャチもわかっていなかったようだ。
「つまりな、お前はありのままでいいってことだよ」
そこでシャチが、ああ、と納得するそぶりを見せた。
「ありの〜ままよ〜ってやつか」
「シャチ、歌下手くそだな」
リンは真顔で感想を述べた。
「う、うるせぇ‼︎」
ペンギンが咳払いをして脱線した路線を戻す。
「まーもうちょっと自分の心に素直になりゃいいかもな」
そう言って持ち場へ戻ってしまった。
取り残されたシャチとリンは顔を見合わせ、部屋に戻るか、とアイコンタクトをして各自室へ戻った。
リンは自室が自室では無くなりかけていたので(ローの部屋で過ごしすぎて)ローの部屋に入る。
すると、ソファにどっかり座り、宙を見つめながらじっと考え事をしているローがいた。
その隣にちょこんと座って同じようにぼーっとしてみる。
その時、ふわりと包まれる感覚に現実に引き戻される。
そのままゆっくりと寝かされ、ソファの上で仰向けになる。ローはそこに被さるようにしていた。
顔がちょうどリンの鎖骨の所に来る。
「どうした、ロー」
「…おれはお前に溺れすぎてるらしい」
「ローは変だな」
「?」
リンの言葉に疑問符を浮かべた顔をするローに言う。
「私は可愛い小柄な女の子じゃなくてスタイルも良くないかといって中身がいいわけでもない私に溺れるなんて美女たちが荒ぶるぞ」
「何言ってんだ……」
「でも」
リンは、天井を眺めながら言った。
「それが嬉しい」
リンの言った言葉に、ローは胸が温かいもので満たされる感覚に陥った。
そのままリンの鎖骨に舌を這わす。
ピクリと体を震わせるリンの唇に自分の唇を持っていけば、柔らかい感触。そして舌を侵入させればお互いの熱に溶けていく。絡み合う舌が脳内も溶かしてしまうようだった。
リンとのキスは、どれだけ回数をしようといつまでも甘美なものだった。