ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第8章 そよ風
やり方なんて書いていなかったので、集中するために目を瞑る。
力を手に集める。
すると、閉じているはずの目に緑の光が見えた。
リンはその瞬間に風を生む。
するとーーー
「治ったな」
「え、ほんと?」
ローの腕を見る。確かに傷は綺麗に消えていた。
「こんなこと本当に出来るなんて…」
自分の手を見つめているリンの頭にポンと手を乗せ、ローは言う。
「そういう能力はリスクがつきものだ。乱用はするなよ」
そう言ってザバッと温泉から上がった。
「戻るぞ」
「うん」
先程のローの言葉は、リンもしっかり理解していた。
なぜなら、ローの腕を直した時に、自分の腕に少しだけ痛みが走ったからだった。
気のせいではない。これはそういう技なのだと頭にインプットした。
リンも着替えるために温泉から上がった。その瞬間、ぼすっと何かをかぶせられる、というより着せられた、の方が正しいだろう。
全身もっふもふのマントのようなものに包まれたリン。雪がちらつくほど寒いはずなのに、何も寒さを感じなかった。
「ロー、これ」
「吸水性、保温性、その他もろもろ機能を高めたんだと。シャチがお前が風邪ひかないようにと持ってきた」
「シャチが・・・」
リンは彼を見直そうと思った。が。
「そのポケットの中にあるもんを読んどけと言ってたぞ」
「ポッケ?」
ゴソゴソと探していると二つにおられた紙を発見した。中を見ると・・・
『使い心地はどうだ?バカは風邪ひかねえっていうけど変な奴は風邪引くかも知れないから作ってみたぜ!!それで、本題だが、この島での研究が面白くなっちまって、服はまた今度見に行こうな!!』
「・・・プッ」
突然吹き出したリンにローは少し嫉妬をしつつも、冷静を保っているフリを続ける。
「どうした」
「シャチらしい文」
くすくすと笑う彼女をみて、嫉妬心などどこかに消えてしまった。彼女の笑みはいつも心を穏やかにしてしまう。
(まるで鎮静剤だな…)
ローはそんなことを考えながらモゾモゾと身支度をしているであろう全身もふもふに目を向けた。
「着替え終わった。行こ」
そう言ってリンは右手を差し出す。
それをしっかり握って温かいポケットのなかにつっこめば、満足そうな顔をするリン。