ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第8章 そよ風
来た道を、二人、雪の中を歩いていく。
「ロー、」
リンに名前を呼ばれ、ローは目を向ける。
「なんだ」
「向き合ったほうがいいのかな」
突然のことで、何と向き合うのか、ローにわからなかった。
「きっと、これは自分で解決するしか打開策はない。本にも明確な、私の求めている答えはなかった。でも、それを解決したからどうするとかわからないんだ」
不安そうな声色に、ローはなぜか胸が締め付けられた。
「お前は何と向き合いたいんだ」
「自分の感情だ。
私は、どうやらローのことを特別視しているみたいなんだ」
きゅっとつないだ手に力が入ったのがわかった。
とくん、と心臓が脈打つのが聞こえる。
いつに間にか見晴らしの良い崖まで出ていた。
遠くの空に月が出ているのが見える。
自分がまさかこんな不意打ちを食らうとは考えもしなかったローは、一瞬頭が真っ白になった。
しかし、気付くとリンを自分の腕の中に閉じ込めていた。
「本当に、お前は変な奴だな」
「なっ!?ひっ人の勇気を…!!もういい!!今のなしだ!!」
恥ずかしさからか真っ赤になっているリンを更にきつく抱きしめる。
「やっと言ったな」
「・・・?」
「おれもお前をとっくに特別視してる。…いや、リン、お前を愛してる」
ローの言った言葉に動けなくなる。
確か何かの本に愛がどうとかってかいてあったな〜どうでもいいことが脳内を駆け巡る。
「あ、愛・・?」
「ああ、愛してる」
「・・・愛ってよくわからない」
少し暗くなるリンの頬にキスをし、耳元で囁く。
「安心しろ、今までどおりしっかり表現してやるからな」
「今までどおり…?!」
スーパー鈍感なリンに呆れつつも想いが通じたことに満足するローだった。
「さて、戻ったらみっちり教えてやる」
「いや、遠慮する。私はもう一回温まりたいから風呂に入る」
「なんだ、積極的だな、一緒に入ってほしいと」
「言ってない!!」
二人は黄色い潜水艦に仲良く帰るのだった。