ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第8章 そよ風
「そんな、私の実験にローを巻き添えにするなんてダメだ‼︎切り傷なんて…ダメだ‼︎」
必死になるリンを目を丸くして見たと思ったら吹き出したロー。
「クッ…ククッ…お前はどこまで可愛いんだ」
「かっ…⁈」
「それに、お前はまだ完治したわけじゃねぇ。無理させられるかバカ」
「うっ…」
いつも通り言い負けて、結局一緒に探すことになった。
船を降り、久々に地面を踏みしめる。
冬島のため、雪が少しちらつき風が突き刺さるような冷たさだった。
「雪…」
「初めてか?」
「初めて……」
空から落ちてくる白いフワフワとした冷たいものを手のひらに受け止める。
それはすぐに水滴へと変わってしまった。
「わっ」
「雪なら後でも楽しめるだろ。ほら、行くぞ」
ローはリンの右手を取り、自分の左手と絡ませコートのポケットへと突っ込んだ。
「あったかい」
「まぁな」
そうして2人、目的の温泉を探しに歩き始めた。
「本によると、その温泉は緑色で、山の奥深くにあるって書いてあったので今山奥にいるのだが…温泉あるの?」
「あるんじゃねぇのか?まぁ人もいねぇだろうし、安心だな」
安心の意味がわからなかったリンは聞き返す。
「安心って」
「お前とおれがそこに入っても何しても問題はねぇってことだろ?」
「なんで一緒に入るような口ぶりなんだ!何してもってなにすんだこの変態‼︎」
リンは薄々と感じていた。
自分のツッコミスキルが上がっていることを。
しかしそのツッコミにも屈しないのが隣を歩いている男。
色々と変なことを言っているが、身長差がすごくあるのに、リンの歩幅に合わせて歩いていたり、右手を温めてくれたり、行動が紳士なのだ。
そのギャップにやられ、リンの心臓は爆発寸前なのだが、風の冷たさに逃げるリンだった。
「とにかく…緑の温泉」
「あったぞ」
「え」
ローが指差す方を見ると、見事に緑色の温泉が。
「緑っていうか黄緑…いやあっさり見つかりすぎでしょうよ⁈」
「大概そんなもんだろ。ほら、入るぞ」
「は」
突然隣で脱ぎだしたローにストップをかける。
「いや入るの私だけでいいしここ寒いし」
「あぁ?お前も寒いのは同じだろうが」
「それもそ…違うそこじゃなくて!」