ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第8章 そよ風
イーズー島に着くと、早速目にはいるのは温泉の数々。
「これが温泉…‼︎」
「後で入るか?」
ローの問いかけに、全力で頷いた。
「これから調査に行ってくるが、何かあったらすぐに連絡しろ」
「何も起こらないって」
「万が一、だ」
ローはリンに念を押して数人のクルーと奥へ入っていった。
「私もあの本を読まなきゃ」
見張りも兼ねて、甲板に椅子を出して本を読んだ。
先人達の言葉が載っていたものではなく、もう一冊の方の本。
だが、警戒するまでもなく、ただのんびりとした空気が漂っていた。
その時、興味深いページを見つけた。見出しが『イーズー島での治癒風習得』だった。
「治癒風…?」
その文によると、多くある温泉のうちのどれか一つに入った後、負傷した者の傷を回復させる技が出来るようになったと。しかしリスクは高く、その傷の痛みを自分が感じなければいけないというのだ。
では、ベポが殴られたとしよう。
治癒風を使うと、ベポの体に『殴られた』ことは無くなり、代わりにリンの身にその事実が移る、痛みを感じる、その衝撃を体に感じる、ということだ。
「Σなんのクエストだよ‼︎…いやでも習得しなきゃ」
リンは他にもこのようなことが書いてないか必死に読み漁った。
一方、ローたちは温泉のお湯を採取し、色々な方法で成分などを調べていた。
「うわーこの温泉色がえげつねぇな」
シャチがボソッと呟くと、ペンギンも頷いた。
「なんで赤いんだ…鉄分…か?」
「おれ、この中入ったら赤くなれるかな」
「「ならねぇよ‼︎」」
ベポの一言に全力で突っ込む二人だった。
夜、探索隊も帰ってきたところで、リンはローに本に書いてあったことを話し、ある温泉に行きたいと言うと、一緒に行くと言いだした。
「いや、でもどの温泉かもわからないし…場所は書いてあるけど」
「その為におれがついて行くんだろ」
リン は、ローの言う”その為”の意味がよくわからなかった。
それを察したローは付け足す。
「お前が治癒できるようになったかわかるモルモットが必要だろ」
「モルモットって…ローはそんなかわいい生き物じゃ…じゃなくて、ローは怪我してないし」
「適当に切り傷でも作って治せりゃいいんだ」
リンはローを見つめる。