ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第8章 そよ風
「んーっ‼︎ふぅ。今日はいい天気」
甲板に出て、体を思いっきり伸ばし、ぽかぽかと気持ちの良い空を仰ぐ。
リンは自称主治医により集中治療され、なんと一週間と2日という早さで骨がくっついたのだ。
しかし完治というわけではないので行動は制限されている。
「お、リン!いたいた!」
シャチとベポが駆け寄ってくる。
「リンは、温泉好き?」
「私はベポが好き…間違えた」
ベポの首を傾げた姿にハートを貫かれ、つい言ってしまった。
「温泉……一応知ってるけど、入ったことないからなぁ…お風呂も半身浴だし…好きか嫌いかはわからない」
「そっか、能力者だから全身浴したら溺れちゃうもんね」
「やっぱり溺れるのか……で、温泉がどうしたの?」
「実はな、次の島はイーズー島って言って、様々な効力をもつ温泉が湧き出てる島なんだぜ‼︎」
シャチは眼を輝かせている。その温泉の成分が気になるのだろう。流石は医者が船長のクルーだとリンは思った。
「イーズー島は冬島なんだ。暖かい格好してくんだぞ」
「うん」
ベポとシャチが去った後も温泉のことを考えていた。
まだ見たこともない温泉。
リンは、また新しいものが見れる、とワクワクした。
るんるんと部屋に戻ると、日光浴はもういいのか、とローが本を読みながら聞く。それにうんと答えるとそりゃよかったと返した。
リンがソファに座るとローも本を閉じてソファに座る。
「お前の髪、潮風の匂いがする」
「そりゃ今外行ってきたんだし」
肩まであるリンの黒髪を掬い上げてはサラサラと手からこぼすロー。
「それはそうと、いいことでもあったのか?」
ローには、リンが何かにワクワクしていることなど簡単にわかってしまう。
「ひっ秘密!」
「そうか」
ローはククッと楽しそうに笑うと、リンの髪を撫でた。