ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第8章 そよ風
「ちょっ痛い‼︎怪我人だ私は‼︎」
「……悪い」
我を取り戻したのか腕を緩めるロー。しかし離れはしなかった。
何かおかしいと感じたリンは、ローの目を見る。
その目はいつもの余裕の光を宿さず、不安な光を宿していた。
「ど…したの」
「なんでもねぇ…」
「嘘だ」
「…」
一体どうしたというのか。
リンは訳が分からず、しばらくローの腕の中にいた。
「…ロー?」
「…」
問いかけても応答はない。
「ロー」
「…」
リンはそっとローの腕を解き、ローにしっかりと向き合う。そして、ローの顔を両手で挟み顔を強制的に自分に向かせる。
「ロー、ほらこっち向いて」
「…」
「もし、ローが今の先人達の言葉を聞いて、私も同じ運命を辿るんじゃ、とか考えてるんだったら、今すぐそんな考え捨てろ。私は島だの生きるものたちだの勝手に殺すつもりもないし自分も一緒に死のうなんて思わない」
リンはこつんとローの額に自分の額を合わせる。
「私は死ぬときはここがいい。それだけは覚えといて。他の場所で死ぬつもりなんて毛頭ない。私はローの側で、みんなの側で生涯を終えるつもりだ」
額を離し、すこし大袈裟かな、と笑ってみせる。
すると、今度はふわりと優しく抱き寄せられた。
「…リン……お前は本当に…」
「大袈裟すぎたか⁈」
ククッと耳元で笑うロー。
「変な奴だ」
「…部屋に帰る」
それから部屋に帰ることをローが許すはずもなく、また無許可に部屋から出たとして怪我が完治するまでローの部屋で過ごす事になった。
「…部屋に帰りたい」
「主治医が近くにいるんだ。こんな手厚い治療他じゃ無ぇぞ?」
ニヤニヤしながら言うローに、枕を投げる。
「うるさいエロ医者‼︎」
「ほう?その元気があるならお前の言うエロ医者とエロいことでもするか?」
「だまれ!もう黙れ!口をとざ…いててて」
流石に暴れすぎて痛みが走る。
それを察したローは優しく肩を支えて、大丈夫か、と心配する。リンにとっては、その変わりように悩んでいたのだ。
心臓が暴れ出すからだった。
「……大丈夫だから部屋に帰る」
「お前はここで集中治療だ。拒否権はない」
チュッとリップ音を響かせリンは頰にキスをされた。