ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第8章 そよ風
ローの部屋のドアをノックし、返事と思われる声が聞こえてからドアを開ける。
「…安静にしてろと言ったはずだが」
「う…ずっと一人なのも退屈だったし…じゃなくてこの本のこと言いに来たの」
なにか書いていた手を止め、ジロリと目を向けてきたローに少しだけ怯んだ。
「おれが読んだものと別の本か。とにかくこっち来い」
ドアの前にいたリンを呼ぶ。ロー自身も椅子から立ち上がり、何かを取りに動いた。
ソファに座ると、ローのカーディガンを掛けられる。
「あ、ありがとう」
「構わねぇ」
ローが気にするのも無理はない。
リンの姿は、普段着なんて着れるはずもなく、ボタンの付いた白地に青のストライプのザ・パジャマのような…パジャマだったのだ。
「で、その本がどうした」
隣に座ったローに本を開いて見せる。
「なんか書いてある?」
「…白い紙だな」
「ペンギンが、もしかしたらフワフワの実の能力者しか読めないんじゃないかって」
リンの手から本を渡され、パラパラとページをめくるも真っ白な紙が続くばかり。
「…おい、ここは読めるぞ」
「!……最後のページ」
それはリンも初めて見るページだった。
どうやらしっかりと万年筆で書いた跡がある。
そこには…
『まったく!先代達は能力者しか見えないとかいうすごく面倒くさいしちょっと厨二感丸出しな方法とりやがって‼︎だから私はしっかりとペンを使います。…』
「…なんだこれ」
「私も同じ言葉を発しようと思ってた」
二人とも沈黙してしまった。
読み進めてみたが、どうやら書いた人物の日記のような文章がつらつらと綴られていた。
今日の昼はパンケーキだの明日は雨だのどうでも良いことが続いたが、最後の一文は二人の目に留まった。
『私は殺した』
「これは…」
そこで、リンはあることに気づく。
既に読んだページにも、何箇所かこの様な事が書かれていたことを。
「確かこのページ…あった!」
『儂はここを殺す事を決意する』
「ここも…」
『俺はこの島を殺す』
「このページも…」
『我はこの島に生けるものすべてと終わりを遂げよう』
ローはリンの音読した先人たちの残した言葉とみられるものを聞き、とっさにリンを抱きしめた。