ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第7章 悪風
「俺はなんて幸運なんだ‼︎これでまた地位と権力が手に入る‼︎」
高笑いするショー・ボンコの声が頭に響く。
手を構えると、腕を踏まれた。
「なっ…⁈」
ショー・ボンコの執事らしき男が、思いっきり踏みつけてきたのである。
しかしリンは、本来なら物理攻撃は効かないはず。
そして、自分の体に力が入らないことに気づく。
「まさか……」
「そうだ、海桜石だ。どうだ?自分が無力なのが分かるだろう?」
ショー・ボンコは金色の髪をかきあげる。
「…か、顔が残念な七光りだな」
「う、ウルセェ‼︎」
ガッと腹を蹴られる。
「うっ…‼︎」
久々にこんな暴力を体に感じた、と他人事のように思考を巡らせる。
「ちっ、生意気な口ききやがって…‼︎自分の置かれてる立場をわかってねぇようだな?」
「…頭が痛いんだ…喚くな」
「貴様〜‼︎」
ドスドスと腹を踏みつけられる。
流石にどこかイカれたのか、リンは口から血を吹き出した。
「クソガキが‼︎」
「うるさい…小心者」
「てめぇ!!!!」
「おい、うちのクルーに何してくれてる?」
ショー・ボンコたちはバッと後ろを振り返る。
そこには、怖い顔をした、死の外科医が立っていた。
「あぁあ‼︎貴様昨日の‼︎」
「おい、その汚ねぇ足をそいつからどけろよ…」
チャキ、とローは刀を構える。
「どけるか‼︎馬鹿だな‼︎お前も地に伏してこうなるんだよ‼︎」
「…早くどけろ」
「おいおい!てめぇ聞こえてんのかぁ⁈」
明らかにローを見下しているショー・ボンコは、自分を貶めたサークルに気づくことなく笑っていた。
「ROOM」
リンは、自分の体に力が入るようになったことを確認する。
そしてゆっくりと起き上がるも、肋骨が数本イカれたようで、うまく起き上がれなかったが、ローが支えてくれた。
「おい、何された」
ローの腕の中はとても安心し、頭痛が和らいでいくのを感じた。
「ロー、ごめん……ヘマした」
「そんなことはいい。」
ローの目は鬼気迫るという表現が正しいと思った。
リンは、ただ腹を蹴られただけだと言ったが、ローの怒りを沸点まで到達させるのには十分だった。