ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第7章 悪風
海軍の船にたどり着いたリンは、片っ端からでんでん虫を機能停止させる。
すべての部屋を回るのに5分とかからなかった。
航海士の部屋であろう場所に、二冊の本がある。
何気なく手に取ると、そこにはリンの生まれ故郷である島のことが載っていた。
さらに驚いたのは、その本に自分のことが書かれていたのだ。
そして、もう一つ。
自分の母親が、病死ではなく
殺された という事実。
「…え、」
キィンと頭が痛くなる。
『お父様、お姉様はもう忘れましたわ』
『そうか、ありがとう。ナディーヌ、お前は本当に優秀な子だな、誇りに思うよ』
『お父様ったら』
自分はこの2人を下から見上げている。
何が起きたのかわからなかった。
わからないのも無理はない。
義理の妹ナディーヌは、カギカギの能力者。あらゆるものに鍵をつけてしまうのだ。
それすらも記憶の蓋に鍵をかけられ忘れていた。
その時。
「おい‼︎ここで何している‼︎」
海兵に見つかった。が、その声が頭に響き頭痛に拍車をかける。
「…うるさい」
片手で頭を抑え、もう片方の手を海兵に向ける。
吹き起こった風は、海兵ごと船を突き破った。
「…制御が、できない…」
依然として鈍器で殴られるような痛みがリンを襲う。
とりあえず海軍の連絡手段を無くしたことは良いとする。
しかし、頭痛がどんどん酷くなる。
何年か分の記憶を修正するかのように目まぐるしく記憶が渦巻く。
「…クッソ……」
その本を持ち、海兵を吹っ飛ばした穴から外に出た。
当然外には張っている海兵が沢山いるわけで、すぐに注目の的となった。
「貴様誰だ‼︎中で何をしていた⁈」
ガチャ、と銃を構える海兵たち。
わーわーと喚く声が頭に響き、頭痛に拍車をかける。
「…うるさい……‼︎」
呻くような声で叫ぶと、リンを取り囲んでいた海兵が誰一人残らず吹っ飛んだ。
「…っは、はぁっ、はぁっ」
頭の痛さに耐えられず、ガクンと膝をつく。
それでもまだ痛みは増していき、ドサッと地面に倒れこんだ。
その時だった。
「あぁ?おい、こいつはもしかして…」
「懸賞金2億ベリー、風使いのリン、です、ショー・ボンコ様」
顔を認識されてはならない男に見つかってしまった。