ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第7章 悪風
「私は本当にいつからこんな…」
「生意気な猫もまた良かったが、こっちの方がいいな」
「生意気な猫は健全だ馬鹿ロー‼︎」
ふわりと風になって腕から逃れる。しかし…
「ほぉ?そんなにおれに追いかけてほしいか」
「どんなポジティブシンキングだよ‼︎」
「 ったく…世話がやけるほど可愛いもんだな」
「どこがだ‼︎てか誰がだ‼︎」
「お前しかいねぇだろ?なぁリン」
「〜〜!!!!!!!!」
結局、言い合いには勝てず、本を読むローの足の間にちょこんと座らされ本を読んでいたリンだった。
翌朝、いつの間にか寝ていたのか、寝るまでの記憶が曖昧なリンの頭は、隣に寝ていたイケメンによって叩き起こされる。
「⁈…⁈‼︎」
目を開けたまま硬直していると、ローも目を覚ます。
「…おっ、おは…ょ…」
何も言わないと思いきや、急に顔を近づけ額にキスをされた。
「…⁈」
「ほら、起きて顔洗え。寝起きの顔も可愛いが…」
起き上がりながら何かトチ狂ったことを言っているような気がしたが、リンは聞かなかったことにした。
それからローが堂々と上半身裸になりだしたので何らかの危険を感じて自分の部屋へ戻った。
言われた通り顔を洗い、服を着替えて髪を整える。
「いま、何時なんだろ」
やけに静かな船内に、リンの心の中に、不安と言う名の雲が広がる。
「…他人のことで不安なんて、いつぶり…」
フッと自分に笑う。
人というものは順応性に優れているんだなと他人事の様に思う。
(いや、私が順応性に優れているのか…)
ふと、以前の自分を思い出す。
逃げている途中、漁船だと思って仮の宿にした船は海賊船で、見事に捕まった。
処理道具にしようも、まだ幼いこともあり、そういう対象にはされなかった。
しかし、雑用にはこき使われ、時には暴力もあった。
当時は抵抗する力も、逃げ出す力もなかったため、耐え忍んでいた。
だが好機は訪れた。海軍が真っ向から攻めてきたのだった。
海賊たちは懸賞金がついているリンを海軍に引き渡そうとした。そのチャンスをリンは見逃さなかったのだ。
密かに鍛えていた技や能力を駆使して、海軍の軍艦一隻と海賊船一隻を海の藻屑としてしまった。