ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第7章 悪風
案外すぐに見つかった。
窓にへばりついているリンの顔を後ろから両手で挟む。
「ぬ…にゃにすふ(なにする)」
「ちょっと来い」
「?」
スタスタと部屋に戻るローの後ろをついていった。
ローの部屋に入り、もはやリンの定位置となったソファに座る。
「なに」
「特に用はない」
「ふうん」
こんなことは日常茶飯事なのでリンは慣れた様子で返事をした。
こういう時は大抵部屋にいて欲しいというアピールだと認識していたので、リンは部屋を出ることなく、ソファに寝転がった。
「ロー」
「なんだ」
「…私なんかをこんな丁寧に扱わなくて良いんだよ」
ぽつんと吐き出された言葉に、ローはリンを見る。
「私を盾にしてもいい、私を囮にしてもいいんだ」
「おい…何を言って」
「私は」
リンは寝転んだまま天井を見つめて話す。
「前、海賊船に捕まったことがあるんだ」
「…」
「まだ弱い頃の話だ。酷い仕打ちを受けた。終いには海軍を前に囮にされた。そいつらは嫌いだったから沈めたけど、この海賊団は好きだ。だからできるなら私が囮になって出航するのが一番いいと思う」
ローは耐えきれずにリンの寝転んでいるソファの前に立つ。
「でもね」
リンの顔を見下ろす。その眼には自分は映っていなくて、天井だけが映っていた。
「でも…私はここを離れたくないんだ。ローと離れたくないんだ。この海賊団のためなら囮にでもなんでもなってやりたいと思った。だけど嫌なんだ、離れるのが」
天井を見つめていた瞳に涙が溢れる。
「さっき、シャチが言ったんだ。船長はお前にもっと凄いもんを見せてくれるって。私はローと、みんなと見たい。だから、全力で守られようと思う」
いつからこんなに泣き虫になったんだろうな、と笑ってみせるリンの涙をローは屈んで拭う。
「それがお前の本心だな」
「うん」
「やっと言ったな」
ローは仰向けに寝転んでいたリンを軽々と抱き上げる。向き合った体制、いわゆる抱っこ状態だ。
「なっな⁈お、降ろせ‼︎」
「お前が離れたくねえと言った以上おれはお前を死んでも離さねぇ。覚悟しとけよ」
ローのニヤリとした顔にやられ、必然的にローの鎖骨部へと顔を埋めることになる。