ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第6章 吹花擘柳 (すいかはくりゅう)
「入るぞ」
なんと入ってきたのは、先ほど考えていたローだった。
「…なに」
「ペンギンから聞いたが、お前重いんだな。少し楽になるようにしてやるよ」
と、布団をバッと捲られ、背中と膝の下に手を入られたと思ったら、ひょいと抱き上げられた。
「……歩けるし、なんで移動させられるのか」
「黙るか、それともバラされて連れてかれるか選べ」
「黙ります」
そしてローの部屋のローのベッドに寝かせられ、丁寧に掛け布団を被せられる。妙に優しい雰囲気に戸惑うリン。
「……すこしあったかい」
「さっきまで寝てたからな。ペンギンに起こされるまでな」
そう。徹夜で本を読んでいたローは睡眠中だったが、ペンギンにリンの生理がやたら重いから何とかしてやってくれと言われた為、直ぐに起きたのだ。
「なんかごめん」
「別に謝ることはねぇ」
ローの匂いと温もりに包まれながら、机に向かっているローの背中を見つめる。
「…なにしてるの」
「調合だ。副作用がなるべく出ないようにな」
リンはその言葉に、この男は医者なのだということを再確認する。
しかし、どうも優しすぎる。
それがくすぐったく、むずむずした。
「ロー、起きる時に頭打たなかったか?」
「あぁ?」
「今日のローはなんか優しくて変になる」
そう言うと、にやりとお得意の笑みを浮かべてこちらを振り返る。
「…どういう風に変なんだ?」
「なんか…照れるというかムズムズするというか」
「ククッ」
「……言わなきゃなよかった」
横に寝ているリンの目線にローが膝を曲げて合わせる。
「まぁ俺も、お前のその弱った顔には弱い」
「…は?」
さらりと髪を耳にかけ、そのまま手を頬へと滑らせた。
「生理現象はしょうがねぇことだ。無理すんじゃねぇ。お前は重い体質なんだ。低血圧でおまけに貧血の症状もでる。とりあえず今は和らげることからだな」
突然正確な処方をされ、殆ど聞き流した。
「和らげる…」
「要するに血を増やせ。」
「血か…どうやって?」
「食い物だ。鉄分とタンパク質の豊富なモンを今日から食え」
「ほう…鉄分?タンパク質?」