ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第6章 吹花擘柳 (すいかはくりゅう)
「いや、シャチがペンギンみたいになったらそれはそれで気持ち悪いか。シャチはシャチでいいや」
「なんだそれ、素直に喜べねぇ」
リンはシャチにぷにーっと頰を引っ張られた。そしてやり返した。
「お前ら何やってんだ…ほら、リン、熱いから気をつけて飲めよ」
二人して頰を引っ張り合っている状況に突っ込んでから、これまた紳士対応をしたペンギンにリンは神々しさを感じていた。
「…ペンギンは空飛べないけど紳士だな、頂きます」
「どういうことだ、召し上がれ」
湯気のたっているミネストローネは具がたっぷりと入っていてとても美味しかった。
「…お前表情変わらないから上手いのか不味いのかわかんねぇよ」
シャチの言葉にバッと顔を上げる。
「すんごく美味しい」
「わりぃ、今の言葉撤回する」
「おれもその方がいいと思うぜ」
こんな目を輝かせているのを不味いと認識するのは間違っている。そう判断した二人は前言撤回した。
半分まで食べると、ペンギンとシャチ以外のクルーは持ち場に行き、三人だけになる。
「…リンってよ、飯の時とか静かだよな」
シャチがふと言った。
「いつも静かだけどな」
ペンギンが付け足す。
「ご飯中喋るものじゃないって教えられたからかな。ご飯美味しくて忙しいのもある。最近はみんなの会話聞いてるの楽しい」
そう言うと、シャチとペンギンは目を合わせて、笑った。
「そりゃあいい。これからもっと面白い話ししてやるからな」
「例えばシャチのピーとかな」
「ピーてなんだよピーて‼︎」
「さぁな」
そんな仲の良い(?)二人のやりとりを聞きながら、ミネストローネの温かさにほっこりするリンだった。
これからしばらく暖かくして過ごせよ、とペンギンから言われ、素直に頷いて部屋に戻ってきた。
防寒といっても、腹痛とだるさと腰の痛みから布団に潜るのがベストだった為、さっそくベッドに潜り込む。
その時、ふとローがいなかったことを思い出す。どうしたのだろうかと気になり、隣の部屋にいるであろう人物を思う。
また徹夜で本でも読んでいたのか…
そんなことを思いながら、布団に深く潜り込んだ。
しばらくじっとしていると、ドアがノックされる。