ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第1章 突風
「シャチ、ペンギン、荷物の移動手伝ってやれ」
「うぃっす」
「よっしゃ」
船から二人降りてくる。
「ストップ」
リンは真っ白な頭で思考がまとまらないながらも順調に進んでいってしまっている状況を止めた。
「私まだあなたたちのこと知らないし、それにあなたたちも私のこと知らないでしょ?」
少し優勢になった気分で言い放つと、「これは船長と俺とシャチしか知らないけど」と前置きし、ペンギンと呼ばれていた男がニッと笑う。
「いや、君が上陸した島の治安をガラリといいものに変えちまった、島を救ったお人好しなのと、ある王国の姫君で、細かい事情は知らねえが、亡命して賞金かけられてることは知ってる」
「なんで・・・それは政府も公開してないはず・・・」
「うちの船長なめんなよ~!!」
驚愕しているリンに、ニカニカと笑ってバシバシと肩を叩くシャチと呼ばれていた男が自慢げに言った。
「逆に聞くけど、そこまで知って、なぜ」
そう、リンはよくわからなかった。政府に追われている自分をわざわざ仲間にしようとするのか。つまり、自分たちのリスクが大きくなるのに。
「気まぐれだ」
「へ?」
気が抜けた。その言葉がすごく適する状況だった。
「気まぐれって・・・」
「そのままの意味だ。そしてお前に拒否権は」
「無いんでしょ」
「わかってんじゃねーか」
ニッと笑ったその顔に慣れてきたリンは、ため息をつき、それと同時に吹っ切れた。
「もうなるようになれ!!」
ビュオッと風が吹き、空から小舟が落ちてきた。
「なんだ?!」
「これに積んであるものが荷物」
「もしかして風で船ごと持ってきちまったのか」
「そう」
シャチはすげーすげーと目を輝かせている。
ペンギンも物珍しそうな視線を向けてくる。
船長は、満足気な笑みを浮かべていた。
リンは、決心を固めるようにすうっと息を吸い込んだ。
「今日から厄介になります」
その一言に、クルーから歓声があがった。
「ところで、あなたの名前何」
「トラファルガー・ローだ」
「へえ。わたしはリンだ。よろしく」
「「「自己紹介遅っ!!?」」」
ここのクルーはツッコミがうまいと脳にインプットした。