ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第4章 木の芽風
夕方、ようやく目を覚ましたローは腕の中で寝息を立てているリンに一瞬状況が掴めなかったが、一連のやりとりを思い出して納得した。
自分の腕の中でこんなに安心して無防備な姿を見せているリンに優越感を感じる。他の誰でもない、自分の腕の中で安心しているんだと。
そう思えば思うほど、なんだか愛おしくなって、壊れ物を扱うように髪を撫でる。
しかし、それでは物足りなくなり、唇をリンの顔に寄せた、が。
「…何してる」
ぱっと目を開けたリンに手で押さえられてしまい、あの柔らかさを感じることができなかった。
「お前が随分気持ちよさそうに寝てたから襲おうと思っただけだ」
「理由が理由として成り立ってない」
その時、ローの口がニヤリとよろしくない笑みを浮かべた。
「じゃあ正当な理由ならさせてくれんのか」
コロンと仰向けにされ、上からローがかぶさる状態にされる。
「正当な理由なんて」
「お前にキスしたい。正当な理由だろ」
その言葉が何を根拠に発せられているのかもわからずに、驚いて思考が固まってしまったリン。
ガードするという余裕などなくて、気づいた時には目の前にローの顔があった。
「ふざけんむっ」
ゆっくり堪能するローの肩を押すも敵わない。
それに、今度はタチが悪かった。
「はっ…はぁ…やめんむっ⁈」
一回舌が抜き取られ空気を吸い込んだ直後、抵抗する暇もなくまた塞がれる。
ぼーっとする頭でリンは、何故ローは自分にこんなことをしてくるのかと考えていたが、結局答えはわからずに考えることを放棄した。
どのくらい時間が経ったか。
唇が離れ、酸欠で働かない頭のままぼーっとローを眺めるリン。
「…っとにお前は可愛いな」
「だまれ変態」
まず第一声がそれだった。