ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第4章 木の芽風
部屋に戻ると、ベッドになにやら人影が。
「…⁈…なんでここで寝てるの…」
そこには先ほど一緒に買い物をしていた人物。
ここの部屋で寝るメリットがわからない。ベッドの質は明らかにローの物の方が良いのだ。
「…綺麗だよなぁ」
ベッドの上に頬杖をつき、寝ている人物を覗き込みながら呟く。初めて見た時も思った、というか思わない日はない。
こいつは俗に言うイケメンだと。
言い寄ってくる女は多いんじゃないのか…と常々思うが、あまりそういう浮いた話は出てこない。
「人の顔ガン見する趣味があったのか」
「え」
こいつ変な奴だ、とぼーっとしていたらサークルが自分を取り囲んでいることに気づかず、クッションとシャンブルズされていて添い寝状態に。
「…そのシャンブルズっておそらく使うのに体力いるんじゃないのか?乱用は良くないと思うけど」
「別に乱用はしてねぇ。これくらい呼吸と同じようなもんだ」
がっちりと拘束されたリンに逃げ場はなかった。
急にすんすんと匂いを嗅ぎだしたローに疑問符が浮かぶ。
「なに」
「…ペンギンの炒飯の匂いだな」
「うん。え、わかるの」
「まぁな…おれにも食わせろ」
「はぁ?食堂でも行ってくれば」
「ここにある」
そう言って何かを見るように伏せられた目に見惚れてしまい、次の行動が予測できなかった。
急に顔が近づいてきて驚いた時にはもう遅く、口が食べられていた。
ローの舌がリンの唇をゆっくりとなぞる。
そして唇を割って中に入り込み、リンの舌を見つけるとねっとりと絡め取るように動く。
突然の出来事に何も考えられずパニックに陥り、しかも慣れないことに酸素が欠乏し始め、頭が真っ白になる。
鼻から漏れる抵抗の意思が混じる声は、最高の味をローにもたらした。
あまりにも長い間口の中で絡まっていた為、口からローの舌が抜き取られる時に物寂しさを感じてしまった自分に戸惑い、同時に両者の混ざり合った唾液が糸を引くのを見て一層顔を赤くする。
「…っは…いきなり何する!」
「美味かった」
意味のわからない発言に、さらに頭が混乱するリン。
「…何なんだ一体」
そう問うた時には既に夢の中に旅立っていた目の前のイケメンは、リンを拘束から解放してくれる気配は微塵もなかった。
「Σ私は抱き枕か‼︎」