ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第4章 木の芽風
「お腹減った…」
「ああ、コックはそういや買い出しでいねぇんだ。…俺が作ってやるよ」
パサリと呼んでいた新聞をたたんで机の上に置き、立ち上がるペンギン。
「…まともなの普通に作れそうペンギン」
「まぁな。…米が残ってんな…よし、炒飯作ってやる」
「ペンギンの炒飯…南極味?」
「何言ってんだ」
ペンギンは手際よく準備をしていく。次第にいい香りが漂い始め、気づくともう出来上がっていた。
「ほらよ」
「…」
リンは前に置かれた炒飯と、隣の椅子に座ったペンギンの顔を交互に見つめる。
「…ペンギンは空飛べなくても料理は出来るんだな…いただきます」
「おいどういうことだ、召し上がれ」
炒飯は見た目も味もとても素晴らしいもので、思わぬところで舌鼓を打った。
黙々と食べ進め、ペロリと平らげてしまったリンを、頬杖をつきながら眺めていたペンギン。
「ごちそうさまでした!すごく美味しかった!」
「そうか、そりゃよかった。…ところで、お前火薬の臭いがする」
さすがはペンギン。ローの右腕っぽいポジションなだけのことはある、と思いながら、今日あったことをそのまま話した。
「女の人を助けた。その時に撃たれたの」
「大丈夫なのか?」
「ロギア系だからね。通り抜けて後ろの壁がダメージ受けただけ」
リンは軽く言って見せたが、ペンギンの顔は明るくは無かった。
「お前はもうお前だけのもんじゃないんだ。これからは気をつけろよ。何かあってからじゃ、遅いんだ」
ふいに頭を撫でられ、瞬きを繰り返すリン。しかし頭を撫でるペンギンの手は優しくて、心地よかった。
「うん、わかった。気をつける」
素直にそう言えば、よし、とわしゃわしゃ頭を撫でられ、何故か反対側の手が顔に近づく。
「それと、米粒ついてんぞ。ガキだな」
リンの口の横についていた米粒をひょいっと取ってぱくりと食べた。リンは恥ずかしさも感じる間も無くペンギンの一通りの動きに、こいつ慣れてるな、と思っていた。
「あぁ、あと勉強、医学のことならおれは夜部屋にいるから分からないことがあったら聞きに来い。教えてやるよ」
「…ありがとう!」
街に用があると言って出かけるペンギンを見送った後、食器を片付けてから自室に向かった。