ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第3章 光風
「遅ェな…」
噴水の前のベンチを陣取ってどっかり座っているロー。
約束の時間から五分が経つ。
その時。
「遅くなってごめんなさい」
上から声がした。
「…!」
ふわりと地面に降りるリン。
そっぽを向きながら差し出したのはアイスコーヒー。
「お詫びみたいな…」
「…ククッ」
「のっ飲まないなら私が飲む」
「飲む」
照れ隠しなのか、やたら口調が強いアカリにローは笑った。
さりげなく座るスペースを作ってくれたので、リンそこにストンとすわる。
コーヒーを飲んでいるローはそれだけでも様になる。
「…」
「なんだ、飲みたいのか」
「いやそうじゃなくて」
「飲ませてやろうか」
ニヤッと笑って目だけこっち見ている。
「バカ」
そうピシャリと言い放ち、フードを深く被る。
ローはこの仕草の理由を知っていた。
赤面を隠すときには必ずすぐにフードを被る癖がコイツにはある、と。
「照れてる顔もまたいいんだけどな」
「…イケメンなんてもう思わない。変態だ。」
「バラすぞ。今ここで」
「ごめんなさい嘘です」
こんなやりとりが日常となってきていた。
と、ローが突然立ち上がる。
「…ちょっと来い」
「?」
飲み干したコーヒーのカップは既にゴミ箱の中。
人通りがさっきより増えて、ローを見失いそうになる。
リンはローの服の裾を掴んでなんとかはぐれないようにしていた。
その手首をがしりとゴツゴツした大きい手が掴む。
「迷子になられても困るからな」
「…お手数をおかけします」
手を引かれて着いたのは、帽子屋さん。
「帽子…私そういえば帽子もってない」
「…お前にこれは違うな…」
「選びはじめんのはえーよ」
ウキウキしていたリンを全く気にせず、既にローは品定めをしていた。
店内をクルクルみて回ると、ピタリとローが立ち止まる。
「…これだな」
ポスっと頭に乗せられたのは、選んだ本人ローと同じような形の帽子。違うのは、全面黒色なところ。
「ほわっ…」
「店員、これはそのまま被っていく」
そう言っていつ会計を済ませたのか、いくぞ、と手を引かれて店を出た。