ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第3章 光風
「いい風」
その時、空を飛んでいたリンの目に止まったのは、なにやら揉め事のような集まり。路地裏なだけあって、ただ事では無いだろうと予測がついた。
「物騒だなぁ」
降りてその集団の後ろに行く。
「おい女、全部金を出せ。隠さずにだ。そうすりゃ命だけは助けてやる」
「ふざけないでよっ‼︎」
「交渉決裂だな」
カチャリと男が銃を構えたとき。
「世の中物騒だね」
突然聞こえてきた声に、バッと後ろを振り向く。
「誰だてめぇ‼︎」
「通りすがりの一般人」
さらりと答えるリンが癪に触ったらしい。
リーダー格の男が銃口を向けてきた。
「お前もついでに殺してやる」
「え?それは嫌だ」
「「Σ軽ゥ‼︎」」
取り巻きの男達がすかさずツッコんだ。
「私はまだ死にたくない。やる事があるからね。ほら、はやく去れ」
「てめぇ舐めてんのか⁈」
男は今にも引き金を引きそうな構えだ。
しかしリンは焦る様子も見せず、ただ目の前の男達を見ている。
フードで隠れて見えない目は、獲物を狩る獣のように、しかし氷のように冷たい光を帯びていた。
「てめぇから殺してやる。殺されたくなかったらそこで一歩も動くな」
ニヤニヤと余裕さを醸し出しているその男。意図は丸分かりだった。取り巻きの男達が周りを囲んでいる。
しかしリンは女の人に向かって歩き出した。
その様子に苛立った男は、引き金を引いた。
「…⁈…なんで…こいつもしかして能力者⁈」
弾は見事にアカリの体に当たることはなくすり抜けて向こう後ろの壁へと飛んで行った。
「正解。そして暴風注意ね。」
そう言った瞬間、ゴオッと竜巻が起こる。
ふぁさりとかぶっていたフードがとれ、髪型が風にゆれる。
「あいつ…女…もしかしてあれは‼︎…⁈ギャァァァアア」
「あ、間違えた。注意じゃなくて、警報か」
そう言った時にはもう既に男達の影はなく、何処かに吹き飛ばされていた。
「警報でもないか。あー…直撃?まぁいいや。待ち合わせ場所に行かなきゃ。今度は気をつけなよ、お嬢さん」
そう言い残してまた空へと浮かんだ。
「あのお方はいったい…?」
被害者である女性は、実際の被害に遭わなかったものの、持って行かれてはいけない何かをリンに奪われた。
「素敵…♡」