ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第3章 光風
「おら、行くぞ」
「わっちょっ」
ぐいっと腕を引かれ、バランスを崩したリンを支えたのはその原因を作った人で。後ろから腹に腕を回され密着する。
「ドジだな」
ククッと笑うローに
「急に引っ張るからだ‼︎」
と反抗するも彼の腕の中。
「まぁ…抱き心地はいいんだよな」
と尚も減らす口を叩くローの胸をぺしぺしと叩く。
「ていうか抱き心地いいって嫌味か…?このイケメン顔が良ければなんでも言っていいと思ってやがる…」
「なんか言ったか」
腹に回した腕の締め付けを少し強くするロー。
「ぐぇ…心の声が漏れちゃって…じゃなくて早く離せ」
「断る」
「⁈」
街中でただいちゃついているバカップルという視線を多く送られていたことに気付かず揉めていた。
「あ、次はアレだ、別行動にしましょう」
しばらく歩いたところで、リンが思い出したように言った。
「あ?」
「察してくださいいや察しろ」
ローはしばらくリンを見ていたが、少し気恥ずかしそうな様子から、女の事情というものかと理解し、またククッと笑った。
「まったくあんたって人は何回笑えば気がすむのか…」
「選ぶの手伝ってやろうか」
「なにを手伝うつもりですか」
「柄とか」
「黙れ」
マシンガントークを繰り広げていたリンは疲れ切って諦めた。
「…30分くらいで戻る。そしたら…あ、さっきの広場のとこに集合でいい?」
「迷子になるなよ」
ローは依然としてリンをからかうような視線を向けている。
「ならない‼︎」
そこで一旦ローと別れ、しばらく歩いたところで、リンは目的を遂げに向かった。
「たくさん買っておけば問題なし」
向かった先は下着を取り扱うお店。
黒いセットのものや白、青を重点的に選び、袋いっぱいになった。ほかにも女に生まれたからには必要なものが多い。ある程度の期間は困らないよう一通り買い揃えた。
「これでよしと…さて、戻るか」
かれこれ十五分。
とりあえず間に合いそうだ。
「上通ってこっかな」
リンは物陰に隠れ、空に浮かんだ。
一方ローは というと、これまた薬屋に寄って薬品を大量に選び、あとで取りにこさせると言って店を出ていた。