ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第3章 光風
数分後。
「これ、お願いします」
十五冊を手にとって持ってきた。
「あぁ、そこにおけ」
示した先にはローの選んだ医学に関する本が既に山積みになっていた。
「よいしょ」
本の背表紙をローが盗み見ると、小説のタイトルが連なる中、一つだけ”医学の初歩”という本が混ざっていた。
店員に後で取りにこさせると言い残し本屋を後にする。
「お前、なんで医学の本なんか選んだんだ」
「だってみんな医者みたいなものでしょ?その中に私だけ何も医学に詳しくないなんて、なんか嫌だ」
「…」
「それに、少しは理解しておいたらいざという時役に立つし。怪我の手当くらいは手伝いたい。」
「…」
「少しでもいい。助けられる力が欲しいとおもっ…わっ⁈」
突然肩を寄せられる。
言い換えれば、肩をだかれている。
「お前のその変なとこ、嫌いじゃねぇ」
「なっ変なとこって失礼な!!私は至って真面目に…」
「ククッ」
「笑うな!」
抵抗するも未だにニヤニヤと笑っているロー。リンは早々に抵抗を続けることを諦めた。
「お前が医者になったらとんでもない治療をしそうだ」
「…否定できない」
と、ローのテンポに巻き込まれる。
「心配するな。誰がそばにいると思ってる」
「みんな…あ!みんな医者だ。聞けばいいんだ」
ポン、と閃いたジェスチャーをする。
「俺がお前の先生になってやってもいい」
「丁重にお断りさせていただきます」
「あ゛?」
「だってわからなかったら絶対やさしーくなんて教えてくれなさそう…いやむしろ痛みで覚えさせそう…」
「てめェ…」
頭に添えられた手がめりめりとリンの頭を鷲掴みにする。
「いたたたたた噓です嘘!冗談‼︎」
「そうか」
そういって、今度はよしよしと撫でる手。情緒不安定じゃないのか、と心の中でつぶやく。
「そういう感じならいい」
「お前の出来次第だな」
またも愉快そうに喉を鳴らすローに、げんなりとするリンだった。