ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第3章 光風
次の日。
リンは珍しく早く起きた(と言っても8時くらい)。
身支度を済ませ、朝の街に向かうため。
船から降りようとすると、思いもよらない人物に声をかけられた。
「おい、待て」
「…!」
「…なんだその目は」
いつも何時に起きているのかしらないが、見た目からして昼過ぎに起きるタイプだと思っていたローが、この時間に起きていたことが衝撃的だったのだ。
「お前、今失礼な事考えてんだろ」
「…おわかりで」
「まぁな。残念だが、俺はお前と違ってだらだら寝たりしないからな」
「…ご健康なことで」
少し負けた気分になったリンは、船から降りた。
と、トスッと自分のものではない着地の音が後ろで一つ。
「俺も行く」
「はいはい…は?」
こうして2人は朝の街へ向かった。
活気な朝市の風景が好きなリンは、態度にこそそんなに出さないが、心内ではワクワクしていた。
「…お前、こういうとこ好きなのか」
「え⁉︎え、うん、まぁ」
残念ながら隠しているつもりでもローにはわかるらしかった。ローはクスリと小さく笑い、リンは恥ずかしさからぷいと顔を逸らす。
歩いて行くと、店が立ち並んでいた。
「ロー、薬局とか本屋とかさがしてこようか?」
つまり、上から見て探す手間を省いてあげると言っているのか。とローは解釈する。
「いや、いい。歩いてりゃ見つかるだろ」
「それもそっか」
リンは歩き続ける。
その足取りは軽やかで、楽しそうな姿にローは頰が緩む。同時にそんな自分に驚いた。
女の姿を見て、こんなに和やかになったことがあっただろうか。寄ってくる女は媚びて、色欲を丸出しにした奴らばかりだった。
とその時、くいと服の袖が引っ張られる。
「ロー、本屋さんあった」
「あぁ」
中に入ると、本屋独特の紙の匂い。
「好きなだけ買え」
「え」
リンは目を丸くした。
「好きなだけって…」
「これから時間はたくさんある」
リンはローの顔をじっと見た。
「………いいの?」
「何度も言わせんな」
そう言うとリンは目を輝かせ、
「ローは真のイケメンだな!」
といって本を物色しに行った。
「…つくづく変な奴だな」
ローはそう言いながら、満足げな表情を浮かべていた。