ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第3章 光風
夜。
島の岬に船をつけ、クルー達は各々目的を果たしに行く。リンは船番をしていた。
船番というものはとても退屈で退屈で仕方がなかった。
「あー…ひーまーーー」
「うるせぇ」
誰もいないとおもって、甲板から海に向かってボヤいていたら突然聞こえたその声。
「げ…いたの」
そこには隈で目つきが一層悪く見える船長の姿。
「いちゃ悪いか」
「いいえ」
再び視線を海に戻す。
「お前、新聞読んだのか」
「え?読んでない。なに、急に」
またローの方を向く。
なんなら向いてる時に話せよとも思いながら。
カツカツと近づいてくるロー。
その手には新聞が握られていた。
「よく読んどけ」
「?」
バサっと開かれたところには自分の名前がデカデカと。
”風使いリン 死亡⁈ ”
その記事には前に使っていた船を沖で発見だとか、事故死か?などといった文字が踊っていた。
「死亡か…」
「…お前わざとだろう。船を沖に流したのも」
「うん。まさかこんなになってくれるとは」
政府がどこまで本気にしているのかはわからない。
事故死。そんな平凡な死に方はしないだろうと思っている。自分自身。
だからこそ、この発表は面白い。
「誰も海賊団に入ったなんて思ってないだろうな」
「…」
ふふんと満足そうなリンを見るロー。
「…お前、国を抜け出したからだけじゃねぇだろ…他の追われてる理由はなんだ」
「…能力」
「能力…?」
「フワフワの実の能力者は、風の声が聞ける。それが政府は欲しいんだ。だから仮に私が捕まっても国には送還されず、死ぬまで政府のペットになる」
未だに背中を向けて軽快に喋るリン。
「運が悪いとインペルダウンかな…あそこはやだな」
空に向かってシャボン玉をふくような吐息とともにぼやく。
「…まぁお前は俺のモンだ。それ以下でもそれ以上でもねぇ」
突然の言葉に後ろを振り向く。そこには自信のある、あの笑みを口に浮かばせたローがいた。
「安心しろ。お前は渡さない。政府にも、インペルダウンにもな」
ニヤッと悪い人の笑みをうかべると、ローは部屋に戻って行った。
「なんだったんだろうか」
ぞくっとしたが、なんだか安心したような気もするような…
「…考えんのめんどくさいな!」
投げ出した。