ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第3章 光風
「…⁈なんでこんな状況に…⁈」
朝目が覚めると重みを感じる。
そして少しの薬品の匂い。酒の匂い。そして見覚えのある腕の刺青。
「…こんな恋愛小説あるあるな状況を自ら体験するとは思わなかった」
「zzz…」
「ロー、起きろ」
「んん…」
うるさいとでも言うかのように更にきつく抱きしめる。
「とりあえず脱出…‼︎」
そう。リンは能力者。風になれるのだ。
綺麗に抜け出せた。あとはその空間に枕でも埋めておこう…と近づいた時だった。
「…まだ寝てろ」
「うわっあぶなっ」
腕を引っ張られ、どさっとまたベッドに戻る羽目に。
「起きてたの⁈つか起きろ‼︎」
「眠い…」
「じゃあんただけねてろ」
「枕…」
単語だけ言い残してまた深い眠りに落ちて行った船長を眺めながらおもった。
寝顔は誰しも純粋だと。
その前にこのきつく抱きしめてくるこの腕。こんな細いのにどっからそんな力が湧いてくるのかと思いながら、上からくる彼の寝息のくすぐったさに耐えていた。
「ねむくなってきた…くそ…覚え…と…け…」
そして再び眠りに落ちて行った。
「キャープテーーン!アカリー!!!起きてー‼︎」
「む…」
バッと起き上がる。つもりだったが無理だった。
「あ…二度寝しちゃった」
「皆心配してるよー?」
「心配⁈私は全然大丈夫なんだけどこの拘束から逃れられなくてですね…」
「それでアカリ起きれなかったんだー!キャプテン怖いもんね。バラされちゃうから」
「そうだね…」
ゾッとしつつもいつまでたっても起きないこのイケメンをツンツンしてやる。
「ほら船長さん起きて。ベポが来てくれたし尚且つ私がお腹すいた」
そう。これのせいで朝ごはんまで食べ損ねているのだ。
「ねぇー」
「…」
「ロー」
「…あ?」
「おはようございます。そしてはやく腕ほどいてください」
ローは状況がすぐに理解できなかったらしい。
「…お前、抱き枕に最適だ」
「」
謎めいたことを言われた昼のこと。
「はっはっは!それで今日は遅かったのか‼︎」
「大変だったんだから…あ、二度寝したけど」
「「Σしたんかい」」
クルー達に事情を説明し、起きてこなくてごめんと謝る。そうしたらそんなこと気にするなと皆が言ってくれたので、涙ぐんでいたところだった。