ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第3章 光風
「ここからだとみんなの顔見れる」
にかっと笑ったその顔になにやら妙な動悸を覚えながら「あぁ」と短く返事をする。
クルーの顔を見ながらコックの美味しい料理を食べるリン。
それを呆れたような、でも優しい目で見るロー。
クルー達はヒソヒソとこう話していた。
「船長が穏やかだ…‼︎」
「珍しい…‼︎」
「「明日は嵐だ…‼︎」」
夜は更け…
甲板に酔いつぶれたもの達が寝転がっているところに毛布をかける影が二つ。
「この役目が板につきそうだな、リン」
「はは…それにしてもペンギンはお酒飲んでないの?」
「まぁこれが役目だからな」
「真面目なのがいてよかった」
態とらしく安堵して息をつくリンにフッと笑うペンギン。
「真面目に変人に騒がしい奴ら。そんなクルーをまとめる船長も大変だな」
「変人って私のことか」
ギンッとわざと睨むリン。
はははと笑うペンギン。
「船長もお前と同じで変だがな」
「…たしかに変だあの人。普通手配書くらいしか見たことない人間を路地裏に連れ込んで拒否権は無いって連れてくるか…?」
「お前そんな勧誘だったのか…」
「まぁ…びっくりした。だって顔は整ってるお兄さんがいきなり路地裏に連れていって、ついてこいって…私そこまで肝座ってない」
「いや十分度胸あるよお前…」
呆れたようにペンギンが言う。
「でも、怖くは無かったかな…」
「そうか」
「多分」
リンがにへっと笑うと、なんだその曖昧な答えは、とペンギンも笑った。
「よし。これでとりあえず風邪はひかねぇだろ。お前も手伝ってくれてありがとな。」
「お安い御用。そろそろ寝ようかな…」
ふあっとあくびをすれば心地よい眠気が襲ってくる。
「明日も朝は早い。今のうちに寝とけ」
「うん。おやすみ」
「おやすみ」
小さく手を振りながら自室へと消えて行ったリンに、親心のようなものを抱いていたペンギン。
「…お前が船に乗ってくれてよかったよ」
ペンギン夜空を見上げ、リンが仲間になってから変化したある人を思い浮かべ、口元に笑みを浮かべるのだった。