ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第2章 潮風
「安心しろ、血液型を把握するためだ」
「血液型…そういえば私知らない」
「だろうな。それだと治療するときに面倒くせぇ」
ローが医者だということは聞いていた。
それだけに、すぐ納得した。
ローは器具の準備をし始める。
「そこに座れ」
指示されたのは先ほどローが本を読んでいた椅子の隣にある丸い椅子。
「腕出せ」
左腕を出すと、血管を指で押して探す。
その真剣な表情に、何かが疼く。
「手を握って力入れろ」
「?」
手をグーにして力を込める。しかし。
「…血管が出てこない」
「はい?」
「低体温か…チッ…手ェ貸せ」
「はい」
「両手だ」
言われた通り両手を出すと、ローの手に包まれた。
「…何の拷問」
「バラすぞ」
「……」
以前見せられた、あのシャチのようにはなりたくなかった。あれをされたが最後、人間でいられる気がしなかったからだ。
「血の巡りを良くしてんだよ…ったく、お前の手、死体みたいだな」
「死体って…」
「冷たい」
確かに、自分でも冷たいと思うことはある。手だけじゃなく、腕や顔も冷たいのだ。冬でもないのに。
「あったかい」
「当たり前だ」
じっとローの手を見る。リンの手は一般的に見て小さい方だった。幼い頃はこの手がコンプレックスでもあったのだ。
現にローの手にすっぽりと収まってしまう小さい手。
ローの手は大きくて骨ばっている。そして、暖かかった。
「手が大きいと、何でも掴めそう。私は小さいから、少ししか掴めない」
ふと昔のことを思い出して言う。
小さかったから、何にも抗えずに、ただねじ伏せられるだけだった。
ぼーっと手を見ていると、ローの手に力が込められた。
「小さいからこそ掴めるモンもあるんじゃねぇのか」
顔を上げると、そこには真剣な目をしたローがいた。