ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第17章 繋風
時は過ぎ、再び物語は動き出す。
「サク!今までありがとう!」
「いいんですよ。さぁ、この『行きたいとこいけ〜る』のドアを開いて飛びなさい」
「…何かの秘密道具感があったけど…」
サクはそんなことはスルーしてにこにこと笑顔でリンの手を取り、手のひらに何かを乗せた。
「…鍵?」
「ええ。それをもって飛んでいけば、きっとあなたが行くべき場所まで運んでくれます」
「よく分からないけど、ありがとう」
リンはにこりと笑った。
「髪、伸びましたねぇ」
「まぁね。割と邪魔」
「髪留めをさしあげましょう。ほら、ちょっと後ろ向いて」
言われるがままに、後ろを向くと、サクが一つにして横で結んでくれた。
胸の方に髪が垂れている状態だ。
「これでボサボサにはなりませんよ」
「ボサボサって…でもありがとう…最後に一つ、いい?」
「はい」
サクはニコニコしている。
「あなたは、ほんとに……いや、やっぱりいいや。じゃあ行くね」
『行きたいとこいけ~る』のドアを開き、足を踏み入れた。
そして飛ぶ瞬間、
「ふふ、お気を付けて。あなたの彼の健康と幸せを祈っていますよ」
とサクは言って手を振った。
「このタイミングでその意味深発言あり!!?!?!」
笑っているサクが少しだけ見えて、ドアは閉まってしまった。
「…ま、いいか。サクだもん」
リンは、サクから貰った鍵を握りしめ、前を向いた。
「待ってて、ロー。会いに行くから。」