ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第16章 幻風
傷の手当てを受けた後、疲れ過ぎて眠くなったので、シャワーを浴びてから少し寝ることにしたリン。
自室のベッドに寝転んで天井を見つめる。
「これだけ疲れると最早サクがほんとに何者なのかとかあのエネミーとか何だよとかこの島が幻だかなんとかって何だよとか全ッ部どーーーーーでも良くなる…」
リンは目を閉じた。
こうして静かな空間で目を閉じればいつだって瞼の裏に現れるのは、つなぎを着たクルー達と白熊と悪い顔が良く似合う船長だった。
(あと少しで会える。がんばらないと)
リンはそう思いながら深い眠りの中に潜っていった。
少ししてからサクがドアをノックした。返事がないので入ってみると、爆睡するリンの姿。
「…この様子だと2日くらい寝ていそうですね…起きてくるまで待ってますかね~」
サクはそっと部屋を出た。
そして2日後。
「よく寝た…お腹空いた」
部屋から出てきて1階に降りてくると、サクが新聞を読んでいた。
「あ、おはようございます。具合はどうですか?」
「具合…いい感じ。……ん?」
サクの読んでいる新聞の日付に違和感を感じる。
「あれ…?え?」
「あぁ、2日寝てましたよ。お腹も空くでしょう。いきなり胃にごはんを入れるのは良くないのでスープを作りましょう」
「あ、うん、ありがとう」
サクはニコリと笑い、新聞をたたんでスープ作りに取り掛かった。
「ねぇサク」
不意に呼ばれて、タマネギを切っていた手元を止め目をリンに向ける。
「何ですか?」
リンはにこりと笑って
「私、絶対立ち止まらない」
と言った。
「……そうですか。 それは良い心構えです」
サクは呆気にとられていたが、ふわりと微笑みながら言った。
リンの目が、生き生きとキラキラと輝いていたからだった。