ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第16章 幻風
「いやちょっと待て!分からないことだらけだ!幻ってどういう事だ!確かに昨日はすごく賑やかだったのに…!」
「あぁ、その事についてはまた後ほど。では、スタート~!」
サクが指をパチンと鳴らした。
すると地面からうにょうにょとスライムのようなものがでてきて、それは人の姿、海兵の姿になった。
「何…これ…」
「それがエネミー。あちこちに出没するから、時間内に沢山倒してね☆」
「クエストかよ?!時間内って何?!」
サクは楽しそうにニコニコしている。
「あーもう!!わけがわからない!!!倒せばいいんだな!」
「そういうこと~。んじゃ、頑張って~。タイムアップになったら呼びに行きますよ~」
サクは店内に戻って行った。
「さて、彼女がどの程度成長できるか楽しみだなぁ」
外からは爆発音やら銃声が聞こえる。
「カップでも磨こうかな~」
サクは外の騒音をBGMにして鼻歌を歌いながら作業に取り掛かった。
どれだけ時間が経っただろうか。
何体倒したのかもうわからないが、体力の限界が近づいていた。
息は上がり体は傷だらけになっていた。
「はぁっ、はぁっ」
ドゥルンと地面からエネミーが現れる。
「っ!」
しかし、それは再び地面にべシャッと崩れた。
「そこまで。おつかれ様です。5時間で523人…なかなか素晴らしい。今日はここまでにしましょう」
その言葉を聞いて、リンは地面に座り込んだ。
「疲れた…」
「明日は少将クラスで行きますからね~」
「なっ…」
サクは苦い顔をしているリンをのぞき込む。
「強くなりたくないなら、いいんです」
「…なりたい。やる。絶対」
「よろしい」
サクはニコリと笑ってリンを担いだ。
「なっなな、何を?!!?!」
「汚れと傷の手当てをしなくては。少し米俵のようにおとなしくしていてくださいね。着いたら降ろしますから」
「米俵…」
疲労のせいで突っ込む気力も失せたリンだった。
「あ、夕飯はカレーですよ」
「…どうも」
米俵に擬態したリンはカレーを頭に思い浮かべながら、おとなしく担がれていった。