ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第16章 幻風
リンは頭をたたき起こされた気分だった。
「…懸賞金…5億…?!」
「あ~それね、今日の朝刊ですよ。また目をつけられてしまいましたねぇ」
サクはにこにこしながら言う。
「サク、私やっぱりただここでじっとしてることできない」
切羽詰まったように言うリン。
しかしサクは落ち着いていた。
「何をそんなに焦るのです」
「だってまた海軍に追われて、仲間を守れなかったら私はッ…!!」
コト、と目の前に湯気の立つカフェラテが置かれた。
「そんなに焦ってもねぇ…で、あなたは何をしたいのですか?」
サクの声色は少しだけ冷徹さを感じさせた。
「何をって……強くなりたい…そのために海へ…!」
海へ出たい、の後半が言えなかったのは、目で追うのが精一杯なスピードで包丁を首に突き付けられたからだった。
「その余裕の無さが命取りなのですよ、リンさん」
相変わらず口元はニコニコしている。
だが包丁を首に突きつけたままだ。
「サク…」
「まぁ焦る気持ちもわからなくはないですが。さて、一旦この話は終わりにして朝食にしましょう」
包丁を下ろしてサンドウィッチの盛られた皿を置いた。
「これを食べてから先程の話をしましょう」
リンは頷くしかなかった。
「さて、じゃあこれからのことですねえ」
「私は、強くなれるんだったら何でもやる。今までもそうやって生きてきたから」
リンはサクの仮面の奥にある瞳をじっと見て言った。
「うん、その覚悟はあってくれてよかったです」
「え?」
サクはドアの方へ歩いていった。
「来てください、リンさん」
言われるがままにサクの後について外に出る。
するとそこは昨日見たような賑やかな風景はどこにも見当たらない。ただ荒れ果てた家屋や建造物がたくさんあるだけだった。
「っ…?!」
リンはすぐサクを見た。
「昨日見たものはね、実は幻なのですよ。これが現実」
サクはニコリと笑った。
「では、今から5時間以内に海軍大佐レベルの戦闘力を持ったエネミーを何体倒せるかやってみましょうか」
「…は?大佐レベル?エネミー?」
リンは訳が分からずに眉を寄せている。
「ふふふ、やってみればわかりますよ~!さあさあ用意はいいですか?」