ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第16章 幻風
「私を殺してもいいですが、同時にあの方も消えますのでご了承くださいね」
サクは相変わらずニコニコして言う。
「あの方って…テメェあいつに何かしたのか…?!」
ローはさらに眼光を鋭くする。
「いやいや、何も。強いていえば、大きな渦に自分から巻き込まれそうになってた所を保護したという感じですね。感謝してください」
サクはわざと困ったような顔をした。
「大きな渦…」
ローは刀を鞘に収める。
「あとは~…そうですね、明日の新聞を見てもらえればわかると思いますが、彼女は間違いなく再び海軍に追われることとなるでしょう。あなたもご存知の通り、海軍は変わりました。それがどんな意味をもたらすのか…まぁ私にもそこまでは分かりかねますが、慎重に行動することを推奨します」
「…」
ローは黙ってサクを見た。
「また何かあったらこっちに来ますね~それじゃおやすみなさい」
にこにこしながら手をひらひらと振りくるんと一回転すると消えた。
「…相変わらず読めねぇ……」
ローはサクに聞いたことを頭の中で整理しながら宙を睨んでいた。
朝日の光が窓から差し込む。その日差しでリンは目を覚ました。
顔を洗って着替えて部屋を出ると、コーヒーのいい香りが漂っていた。
店に続く階段を降りれば優雅にカップを磨いているサクがいた。
「あ、おはようございます。よく寝れました?」
「うん。ぐっすり…ってサク」
「はい?」
リンの視線の先には少し溶けているミニサイズの雪だるまが、カウンターの上に乗せられている。ちゃんと雪だるまの下には溶けて水浸しにならないよう皿がある。
「なんで雪だるま…ここ雪なんて降ってないのに」
「いやぁテンションが上がっちゃって。あ、こちらの話しです。お気にせず☆」
「……そう」
納得いかないリンだが、寝起きでまだ完全に頭も起きていないせいで深く追求することは無かった。
「いま朝食を用意しますね」
「え、いいよそれくらい自分でやる」
「いいですから、ほら座った座った。カフェラテも用意しますね~」
言われるがままカウンター席に座り、サクと向き合う。相変わらず仮面の下の目元はわからない。
ふと、カウンターの端においてある新聞が目に留まった。
引き寄せてみると、1面にデカデカと自分が写っていた。