ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第15章 暁風
「はは、ほんとかわいい」
「もー‼」
たしぎとじゃれていると、そこに短時間で少しやつれたようなスモーカーが現れた。
「あれ、書類は終わったの?」
「・・・気にすんな。リン、お前を降ろす島だが、今夜には着くだろう。そこに着いたら」
「わかってるよ。私は大丈夫。心配しすぎ」
そういうとクスッとたしぎが笑う。スモーカーはたしぎを目で牽制した。
それからたしぎは仕事に戻り、スモーカーとリンだけが甲板に立つ。静かな時間。
「…書類、いいの?」
問いかけると、スモーカーは葉巻をぽいと海に捨てた。
「あんなもんいつでもできる。お前と話すことはこの瞬間しかねえだろ」
「!」
スモーカーは空を見て言った。リンは昔から変わらず自分との時間を大切にしてくれるスモーカーに涙がにじむ。
「…スモーカー、きっといいお父さんになるよ」
「あぁ?」
「何でもない。さて、じゃあ賭けをしようスモーカー!」
「は?」
突然賭けをしようと言われ「よしやろう」などと返事ができる人がいるのか知らないがスモーカーはできなかった。
「賭けってなんのだ」
「私の賞金額」
「」
きっとさっき葉巻を捨てずに咥えていたら落としていたことだろう。
「私は3億以上だと思う。スモーカーは?」
「…2億」
流されるままに適当に無難に答えておいた。しかし負けた時のリスクは何なのか。
「私が勝ったら、もし私が捕まっても3日に1回会いに来てね」
「おれが勝ったらどうなる」
「んー…10日に1回でいいよ」
「会いに行くことは変わらねえんだな…」
「うん」
二コリと笑うリンにスモーカーはリンの頭に手をのせぐりぐりと頭を撫でた。
「なにす」
「おれ以外の海兵には捕まんじゃねえぞ」
「!」
驚いてスモーカーを見る。ニィっと笑うスモーカーにリンも同じ表情を返す。
「スモーカーにも捕まらないよ」
そして夜。少し遠くの海上からでも町の灯りが見える。リンは荷物を持って甲板に立っていた。向かい合うようにして立っているのはスモーカーとたしぎ。
「リンさん、体にお気をつけて」
「変なとこで死ぬなよ」
「Σ死なないわ!」
荷物を持ち直し、顔を上げた。