ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第15章 暁風
海軍の船に乗り、出港の時が来た。
ひっそりと島を離れる海軍の船。少しは名残惜しいと思ったのか、リンは甲板に出てスモーカーの隣に立っていた。
船尾の甲板で遠ざかる島を見つめながらスモーカーは口を開いた。
「これからどうするんだ」
「んー、海軍には追われるようになるだろうし、この島の一件でいろんなところに目をつけられるかも・・・めんどくさい・・」
スモーカーは呆れた顔でリンを見る。
「ま、でも自由に生きていくよ」
「・・・そうか」
リンは視線をスモーカーに移す。
「スモーカーとはまたどこかで会えそうな気がする。その時に札付きになってても変わらず接してくれたら嬉しいな・・なんてわがままだね。捕まえるのが仕事なのに」
スモーカーはフッと笑ってリンを見る。
「その時の気分次第だな」
「スモーカー・・・ありがと」
どこまでも優しい彼に泣きそうになりながらお礼を言った。
その時。
「おーーーーーーーい!!!!!!」
「「?!」」
リンもスモーカーも驚いて声の聞こえた方を見ると、ちょうど見えるようになった港にたくさんの人が集まっていた。
中でも一番前で手を振っている声の主だと思われる青年に、リンは心当たりがあった。
「あれは…あの時の…」
青年は手をおろし、力いっぱい叫んだ。
「もうこの先もずっと貧しい思いをして暮らしていくんだって諦めてたおれたちに!!!!きっかけを作ってくれてありがとう!!!リン姫が作ってくれたこの始まりを!!!絶対無駄にはしない!!!!!」
「!」
リンはまさかありがとうだなんていわれるとは思っていなかった。
そして始まりという言葉。かつてのフワフワの実の能力者残したらしい本には一切出てこなかった始まりという言葉。それがリンの心に大きく響いた。
「だから!!いい国になったらまた来てくれよ!!!おれたちがんばるから!!!」
青年が言い終わると、あちらこちらからリン姫だとか姫様だとか叫ぶ声が聞こえる。
「私、この国に捨てられたと今までそういう認識で生きてきたのに、こんなたった数日で、また来てくれとかありがとうとか…っ」
「何言ってやがる。ここはお前の生まれ故郷だろ。いつでも帰っていい場所じゃねえか」