ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第15章 暁風
そして落ち着きを取り戻し、もう一度声をかけた。
「リン、起きろ。起きなきゃ船に乗せてやらねぇぞ」
「起きるッ!!!」
ガバッと上半身を起こしたリン。
「おはようスモーカー」
「おはようじゃねぇ…出航が明日の早朝に変わった。すぐ出れるように船に荷物を運びてぇんだが…ここにおいてあるトランクケースとベッドの上にいる荷物だけでいいんだな」
「ベッドの上にいる、まで言ったんだからそこ荷物って言わなくてもいいと思うんだけど…っていうかそのトランクケース誰が持ってきたんだろ…中身見ていい?」
そう言うとスモーカーが見やすいようにベッドの上に置いてくれた。
ケースを開くと自分の荷物と更に何かが詰められている。そして手紙があった。
「…お姉様へ…コアラ様に教えていただき、勝手ながら荷物をまとめさせていただきました…」
お姉様へ
コアラ様に教えていただき、勝手ながら荷物をまとめさせていただきました。その他に新しい服や日用品などもいれておきましたので使ってください。
本当なら直接会いに行って抱きついて濃厚な抱擁をして頬ずりをして手を絡ませて…
「…ここは飛ばそう…」
リンは容赦なくその甘い言葉の羅列を飛ばした。
いつか、この国が良い国となった時に、胸を張ってお姉様とお会いしたいです。それがナディーヌの願いです。この国が良い国となっていた時には、たくさん褒めてください♡
お体にお気を付けて。どの海にいても、ナディーヌはお姉様の事をいつも想っております。
ナディーヌ
「…スモーカー、多分この国はもう大丈夫だ」
「あ?」
唐突に言われて気の抜けた返事が出てしまった。
「この国には私の自慢の妹がいるからもう大丈夫だ。だけどたまに様子を見に来てやって欲しい」
スモーカーは目を丸くした。血は繋がっていないはずであり、幼少期の頃の憎い相手ではなかったのだろうか。いや、そうだっただろう。しかしリンはその事さえももう昔のことと割り切ったのか。
ちがう。受け入れたのだ。その大きな心で受け止め、受け入れたのだ。
スモーカーはそう思った。
「お前に頼まれちゃ断れねぇな」
そう言うと、リンは笑顔になった。
「ありがとうスモーカー!!」
その笑顔に、スモーカーも頬がゆるみそうになるのだった。