ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第2章 潮風
「俺の部屋にいくつか小説がある。いらねえから持ってっていいぞ」
「ひいの?!(いいの?!)」
目を一瞬きらめかせたリンを、ローは見逃さなかった。
「あぁ」
「ありがとうございまふ…いい加減はなへ(離せ)」
くすくすと笑う船長を睨み、また視線を海に戻した。
どれくらいページをめくっただろうか。
こてん、とローの左肩に重みがかかる。何かと首をひねればスヤスヤと寝息を立てるリン。
「チッ」
めんどくさそうに、でも楽しそうな表情を浮かべて、本を閉じ優しくリンを抱きかかえる。
そのまま部屋に運んでベッドに寝かせてやった。
「リン~起きて~」
「んんn…ん?!」
ガバっと起き上がる。自分の状況が掴めなかった。
「お昼だよ!」
「え、うそ」
食堂に入ると、二回目のおはようだな、とクルー達からからかわれた。
席を指示されると、なんとそれはローの隣。
「…他の席じゃだめなの?シャチ、代わ」
「やめてくれバラされる」
その即答と怯えたような様子から、ローに視線を移すと、無駄に殺気のこもった目でシャチを見ていた。
「…わかったよ、いいよここで」
ローの隣に座ると、ニヤリと意味ありげな笑みを浮かべた。
「人の肩で寝やがって…後でそれ相応の代価を払ってもらうからな」
「…は?なんで。嫌d」
「拒否権はねえ。後で俺の部屋に来い」
状況がつかめずにポカンとしていると、さっさと食え、とローにどやされる。
シャチは、バラされたらちゃんと元に戻してやっからな、とフォローのつもりなのか謎のプレッシャーをかけてくる。
「…ベポ、あなただけだよ、私の希望は…」
ローとは逆隣のベポに寄り添う。
「おれ希望なの?」
理解できていないベポに、深く考えなくていいんだよとほっぺを撫で、美味しそうな料理を口に運んだ。
昼食後、言われた通りローの部屋に来たリン。ノックをすると、入れ、と声が聞こえた。
「…来たけど」
「まあ座れ」
「…?」
昨日と同じソファに座る。
ローも隣に座ってきた。
「…近い」
「気のせいだ。で、代価だが…」
横を向いて話していたリンの顎に手を添え、ローはこう言い放った。
「お前からおれに キスしろ」