ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第14章 業風
リンはその場に胡座をかいて座り、地図を広げた。
「私の能力で、この東側に住んでる奴ら全員洗脳してやる。そして壁を壊す。ただし、ここであんたら西側が恨みを持って復讐でも始められたら全て終わりだ。この状況に戻る。」
「ちょっと待ってくれよ」
「ん?」
若い青年が声を上げる。
「そんな夢みたいなことできるのか…?そもそも王を変えることなんて…」
リンは忘れてた、と右手を頭の帽子の上に乗せた。
「王には消えてもらう。選挙するなり推薦するなりその後の事は任せる」
「そんな…!!」
「その後は任せるって…」
不満の声があちこちから上がる。
「私は」
リンは声をあげた。ざわめきが静かになる。
「私はこの島の、母が愛した国民に追いやられ殺されそうになった。母には申し訳ないが、そこまで親切にする筋合いも意思もない。もちろん姫だなんて地位もいらないしもうこの島と無関係な人間として扱ってくれて構わない。」
そう言うと、多くが俯いた。
「おねーちゃん、だれに殺されそうになったの?」
綺麗とは言えない服を着て、穴の空いた靴を履いている子供が聞いてきた。
リンは今は自分の元にないが、心臓が締め付けられるような気持ちになった。
「君にはまだ難しい話かな。」
そう濁して、その子供の頭を撫でて立ち上がった。
「また明日ここに来るから、その時答えを聞かせて。あ、矢とか石はもういらないからね。」
そして飛び去って行った。
一方城では。
「ナディーヌ!!」
「はい、お父様」
「あの女の記憶を全て封じてしまえ」
「わかりましたわ」
そんな計画を立てていることなど知らず、呑気に城の正面から戻ってきたリンだった。