ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第14章 業風
「おれ島を換気しようなんて言う奴初めてだ…」
「わ、私も…」
「私も自分で言っておいて意味がわからない」
沈黙が三人を包む。
「ま、それはさておき、お二人にはこの国の交易について、国民の階級についてとか引き続き調べててください。私は壁の向こうの裏の街へ行ってくる」
しかし、サボが反論をした。
「馬鹿、王族であるお前が一人で行って安全な訳がねぇ。行くならおれも…」
「サボくんはコアラちゃんをしっかり守ってあげなさい。私こう見えても強いからね」
ニコリと笑い、コアラにもその笑顔を向けた。
「そんなわけで、私は行ってきます」
そう言って、リンは城の外へと飛び立った。
貧困や強制労働の西の地域。人々は疲れていた。
リンは、大衆に呼びかけができるような場所はないかと探し、中心部あたりになにか台のようなモノがあるのを見つけた。
「お、あそこにしよ」
リンは姿を消さず飛んで、その台に降り立った。
人が飛んでいた、とか誰かあそこにたってるぞ、とすぐに街はざわめき始めた。そして、人だかりもでき始めた。
突然、どこからか矢が飛んできた。それをよけ尚且つ片手で掴み、ペキっと折った。
「ご挨拶どうもありがとう。私の顔を知っている人もいれば知らない人もいるだろうけど、私は王族の娘だ。この国がこうなる前はリン姫って呼ばれてたけど…」
集まった人だかりの子供を除くほとんどの人が青ざめた。
「そんな怯えた顔しないで。今日は提案をしに来たんだ」
そう言うと、石が飛んできた。
「俺たちに復讐でもしにきたか!!?」
その声の方を見ると、幼い頃の記憶が蘇る。
幼く何もわからない自分に向けられた刃。
年老いてシワは増えているが、間違いなく自分に刃を向けた男だった。
「復讐するんだったらこの島まるごともう消してる」
真顔でそう答えるリンに、全員が萎縮した。
「提案をしに来たんだっていってるのに…あんたたちのこの状況をどうにかしようって話」
その言葉に、ざわつき始めた。
「そんな言葉誰が信じるってんだ」
先程の男がまた悪態をつく。
「信じる人だけ集まりゃいい。この状況を打開したい人間だけでいい。そのまま泣き寝入りしたいやつは聞くな。」