ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第14章 業風
「ヒッ?!てっテメェ何しやがった?!」
喚くショー・ボンコをスルーしつつ、読み取ったことをまとめた。
ボンコの祖父は貿易会社の社長で、大金持ちであり、孫を国王にしてさらに金を儲けようという魂胆らしい。海軍のお偉いさんだったという父親も、最近汚職がバレそうになり慌てて除隊。今は会社の役員となっているらしい。
「…くだらない…そして…ありきたりだ…」
「う、うるせぇ!なにがありきたりなんだよ!!むしろありきたりじゃねぇよ!!こんなに好きな奴に会えねぇ夢小説あるか?!…ん?オレは今なにを…」
ボンコを乗っ取るのは簡単であった。
「まぁいい!さてリン、これから婚約のパーティーだ。国を挙げての祝福!!」
「出ない」
「うんうん、わかるぞ感激してるんだろ?」
「じゃ、私忙しいんで」
ボンコがペラペラとだるい話をしているうちに、リンは風になって部屋を抜け出した。
向かったのは、母の部屋。
目を閉じて、意識を集中させる。
そして風を、読んだ。
『本棚の上から三段目の右から二番目の本をだして』
「…本?」
風を読み、こんなに意図的なメッセージがあったことは未だかつてなかった。
「…まだ忘れてる記憶あるのかな……母上も同じ能力を持ってたのか…?」
指示通りの場所の本を取ると、栞が挟まっていた。
それはただの栞ではなく、銀でできた栞で、鍵のような形をしており、メッセージが刻まれていた。
『机の引き出し』
見てみると、この栞の鍵とぴったりハマるような穴が開いていた。
そこには、白い封筒が入っていた。
「手紙?」
封筒をあけて、中にある紙をだし、開いた。
「この手紙を読んでいるということは、その時が来たのですね。母である私が直接あなたに話してあげられれば良かったのだけれど、できないので手紙にしました。
あなたは今、たくさんの謎を抱えていることでしょう。能力で読み取れた分もあるかもしれないけれど、まだわからないこともあるわね。
まず初めに、大切なことを書いておきます。あなたの父親は、本当は違う人なのです。本当の父親は、レーブロン・E・バトラー。フワフワの実を私の代わりに食べ、政府に捕まり、そのまま帰っては来ませんでした。」
そこまで読んで、ぺたんと床に座り込んでしまった。