ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第14章 業風
王宮はリンが子供の頃のものではなく、豪華な造りに変わっていた。
しかし、どうやら改築しただけのようで、部屋の場所などはかわっていなかった。
通された客室も、装飾や調度品が豪華なものばかり。
ソファに座って待っていると、ドアが開く音がした。
「久しぶりだね、リン」
目の前に座ったのは、あの頃から少しだけ老けた、『父』と呼んでいた人物だった。
背は170cmくらいの、黒髪の短髪で、少しぽっちゃりとしている男。
優しそうな笑顔をこちらにむけているが、本性を知っているリンは表情一つ変えなかった。
「久々の再会で父にも緊張しているのかい?」
「目的は何」
「少し生意気に育ってしまったんだね…教育が必要だ。おい、教師を手配しろ」
控えている側近に言うと、側近の男は部屋を出て行った。
「私を海軍で鍛えさせ国に呼び戻した目的は何」
「せっかちなところは母親譲りかな?……まぁいい。お前には私の後継者になってもらわねばならない。だがお前は辞退するんだ」
話の雲行きが怪しくなってきた。リンは眉をひそめる。
「お前は子供を授かれないという理由で王妃を辞退する。そしてナディーヌが王妃の座につく。お前はナディーヌの警護をするんだ」
黙って聞いていればとてもくだらない話だった。リンはソファにどっかりともたれかかった。
「とりあえず、私は疲れているんだ。休ませろ」
「…マイペースなところは…いや、何でもない。部屋は用意してあるよ。案内しろ」
今度はメイドの格好をした女の子が部屋へ案内してくれるようだった。
「こちらです」
大理石の床を歩くたび、カツン、コツンと足音が響く。
「ねぇ」
リンはメイドに声をかけた。