ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第14章 業風
生まれ故郷、シャーネル島には着くまでに7日ほどかかった。
シャーネル島に着くと、大勢の人で港が賑わっていた。
「なに…これ」
「どうやらリンさんを歓迎しているような…」
ワーワーと騒いでいる声をよく聞いてみると、「よくご無事で!」とか「おかえりなさい」とかそんな言葉だった。
「よくご無事でって…どの口が言うか…」
「え…」
聞いたことのないリンの低い声にコビーは驚きを隠せていないようだった。
船を降りると、赤い絨毯が敷かれていた。その脇には溢れんばかりの人。そしてすぐにSPのような人が数人脇に控えている。
「では、僕たちはこれで」
コビーが敬礼をする。
「うん、ありがとう」
リンはそれに手を振ることで応えた。
出航するのを待ってから、くるりと海に背を向けると、騒がしい人の中を歩いていった。
「リン様、あちらにお車をご用意しておりますので」
秘書のような外見の女がそう伝える。リンは黙って指示に従った。
車に乗り込み、車窓から街を眺める。しかし人がいっぱいでなにも景色が見えなかった。
「質問してもいいか」
リンは口を開いた。
「はい」
「いつもこんなに人が多いのか」
「いえ、本日はリン様のご帰還、そして王妃へとおなりになる日。市民が喜ぶのも当然です」
帰還、王妃、と言う言葉。
「王妃?どういうこと?」
「はい、友好国であるルーイビートン王国の、ショー・ボンコ王子が待っておられます」
「………はぁああ?!」
どうやら予想もしなかったとんでもない状況下に置かれていたリンだった。