ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第13章 朝凪
スモーカーが呼んできたドクターに部屋を変えたいと申し出るとOKサインを出したので、別室へと移った。静かな場所がいいとリンは希望した。
それは、スモーカーと話をするためでもあった。
スモーカーは窓の近くの椅子に座り、リンはベッドから体を半分起こし、枕にもたれかかっている。
スモーカーが煙を吐き出し、口を開いた。
「まさか、あのお姫さんと戦場で会うとは思わなかった」
「いろいろあって。もうお姫様じゃないんです」
「そうか。…悪かった」
突然スモーカーが謝ったことに、リンは驚いて目をぱちくりさせた。
「…??」
「王室の不穏な空気を感じ取っていたのにも関わらず、異動が決まってそれに従うしかなかった。それだけじゃねえ。お前が一人になっちまうこともわかってたのに」
「スモーカーさん」
自分の無力さを噛み締めるように拳を握り締め、下を向いているスモーカーに呼びかける。
「私はなにも、いや、寧ろ感謝してます。あなたがいてくれたからこそ、今の私がある。そう思ってます。いえ、そうなんです。だから、自分を責めないで下さい」
そう言うと、スモーカーはリンをじっと見て、少し口角を上げて嬉しそうに言った。
「…強くなったんだな」
リンはその言葉に、照れ臭そうに笑った。
「赤髪と繋がりがあることは、センゴクさんが伏せてくれるそうだ」
「…シャンクスは、恩人の一人です」
「だろうな。奴の目が、あんなに優しく光るもんだと初めて知った。まぁおれには関係ねぇか…」
そう言ったスモーカーの目が、どこか寂しげな光を宿していたので、リンは話題を変えた。
「そういえば、麦わらのルフィは…?」
「麦わらは、トラファルガー・ローの船に運ばれ逃走中だ」
「…!!!」
トラファルガー・ローという名前が出てきたことに驚きを隠せないでいる。
(じゃああの時の声は、幻聴ではなかった…)
そうわかった瞬間、会いたいという思いがこみ上げてくる。
リンは自分の心臓のあたりを、包帯の上から鷲掴みにした。
「どうした、どこか痛むか?」
「いや、大丈夫…大丈夫です…」
「…」
自分に言い聞かせるように、大丈夫と繰り返すリンだった。
と、そこへドアがノックされクザンが入ってきた。