ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第12章 夜風
エースは倒れていく仲間を凝視しながら答えた。
「…エースには、こんなに沢山の愛してくれる人がいるんだな」
「…‼︎」
エースは目を見開く。
「私にもいるよ。私を愛してくれた人達。その人達を護りたいからこの場にいる。腹をくくってな」
「…」
リンは帽子を手に取り、少しの間眺めてから、深くかぶり直した。
「休みすぎた。ちょっと参加してこよかな」
立ち上がって、処刑台から飛び降りた。
「…あの娘…リンは…よくあそこまで成長したもんだな」
センゴクが懐かしむように言った。
「まだ彼女の母親が生きていた頃、あの国は平和そのものだった。だが彼女が物心ついたときには、母親はいない。記憶にほとんどないだろうな」
エースは顔を上げた。
その顔は、先ほどとは違う、何かを決意した顔だった。
「リン!休んでなくていいのか」
クザンに、笑顔で答える。
「大丈夫。今度はちゃんと休みながらやるから。持久戦って初めてなんだ」
「そうか」
だがリンはじっとしていられずに前線へと飛び込む。
「斬り風」
切り裂くような風が吹く。
風を受けたものは切り傷が体に刻まれた。
「なんだこいつ!!」
「ヒトだ」
「Σまともに答えんなァァア」
四方から襲い掛かってくる海賊に、ある風を受けさせる。
すると。
「「「「( ˘ω˘ )スヤァ… 」」」」
「おいあそこ一帯寝始めたぞ⁈」
「何が起きてる⁈」
リンが使ったのは『春風』。
温暖で和やかなその風には睡眠作用がある。
「さて次」
辺りを見回し、ゴム人間を見つけた。
「よし」
ビュオッと風になってルフィの背後に移動する。
「初めましてルフィ」
「何だ⁈お前‼︎」
バタバタと敵を倒して進んでいくルフィの背後をふよふよと飛んでついていく。
「私は訳あり海兵。道空けてやる」
「え?」
ふわっとルフィの前に躍り出ると、息を深く吸い込んで筒状にした右手を口に当て、一気にはいた。
暴風が吹き出し、立ちはだかっていた兵士たちは皆倒れ、道ができた。
「すっげー!!」
「ほら、お兄さん助けるんでしょ?お礼はまたどこかで会った時でいいよ」
「うん!ありがとな、お前‼︎」
走っていく背中を見る。真っ直ぐで、迷いのない目だったと思い返していた。