ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第12章 夜風
海軍は戦力を総動員させて対峙している。七武海も召集され、戦っている。
リンは風を読み続け、攻撃を予測しクザンに伝える。それをひたすら繰り返していた。
こんなに多くの風がある中でリアルタイムで風読みすることは簡単なことではない。重要な情報を持つ風を瞬時に見つけ出し読む。これが如何に大変なことであるかは、額から顎に流れ落ちる汗が示していた。
その時、空から何かが降ってきた。
「クザン、上ーーー」
それは、インペルダウンから来た囚人たちと、ルフィ達だった。
「エース!!!」
風がどよめいた。しかしそれも一瞬の出来事。
戦闘態勢を緩めずに戦う海兵たち。白ひげのクルー達。
(…少し、手伝ってあげよう…)
リンはルフィへと手を向ける。
「…幸運風(ラッキー・ブロウ)」
ルフィだけに向かって風が吹く。
当の本人は気付いていない。
幸運風は文字通り、幸運を運ぶ風である。
術者にはその分の不幸が降りかかるというリスクがあると本に書いてあったが、リンは迷うことなく風を吹かせた。
理由は特にない。強いて言えば、
「気まぐれ…か」
ローの言葉を思い出す。気まぐれが導いてくれたローとの出会い。リンは唇に弧を描いた。
戦いは激しくなっていく。
リンは巨人を初めて目にした。オーズというらしい。しきりにエース君と言っていた。エースだって、ルフィだけでなく白ひげ海賊団にとっても大切な人なんだと思い知った。
「…いいなぁ」
そう呟いた瞬間、意識が遠のく。
能力のリスクがリンの体力、精神力の限界に達したようだ。
地面に倒れこむ寸前にヒヤリとした腕に抱きとめられる。
「ハァッ、ハァッ」
「…フワフワの能力ってのは、便利だがリスクもそれなりだな。よく頑張った。あとは任せろ」
「でもクザン…」
「俺たちが負けるわけないでしょ。センゴクさんのとこが一番安全だから」
そう言うと、センゴクのいる処刑台に寝かされた。
経緯を話し、クザンは前線に戻っていった。
「お前…‼︎」
「…エース、元気?」
にこりと無理に笑って見せたがエースは何も言わなかった。
息が整うのを待って、リンは起き上がり、エースの隣に座った。
「これが処刑台の景色か…なぁエース」
「…なんだ」