ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第12章 夜風
処刑まで3時間。
兵は配置につき、エースは処刑台にいる。
昨日から、エースの弟だというルフィが動き始めていることを感じながらも、それは海軍に伝えなかった。
リンは、三大将のクザンの椅子の後ろに寄りかかって控えていた。
センゴクが、エースの過去を話し始めた時に、ふと考える。
(…海賊は皆こうなるのか…?…ローも捕まったらいずれ…)
そこまで考えて、考えるのをやめた。
ずっと考えないようにしていたのに、気付いた時にはもう遅かった。
気を抜いてしまった。ぶわっと記憶が溢れ出す。
胸が締め付けられる。今はエースの処刑前で、白ひげとの戦争に備えて控えているのにもかかわらず、ローのことで頭がいっぱいになる。
(今はこんな事を考えてる場合じゃないのに…!)
きゅうきゅうと締め付けられる心臓のあたりをぐしゃっと右手でわし掴みにする。
「おい、リン、いつでも行けるように構えとけよ」
クザンの声がして、ハッとする。
「…わかってる」
帽子を深くかぶり直した。
「ほぉ…噂の風の力を操る能力…楽しみじゃのう」
赤犬ことサカズキがニタリと笑う。
「…そんな大したことないから期待しないでください」
「謙遜にしか聞こえないよォ〜」
黄猿ことボルサリーノが言う。
「いや本当に…」
なんだかんだこの三大将とは仲良くなってしまった。これが後にどういう風をもたらすのか、リン自身にもわからないが。
と、その時、ある風を感じた。
「クザン…来る」
「なに?」
すると、突然門が開き、海賊船が湾内に侵入してきた。
さらに、水中からも白ひげ海賊団が現れたのだ。
「風読み、開始」
クザンの椅子の後ろからずれ、海軍本部内全域に風を一つ吹かせた。
「さぁ、来い」
戦争が、始まった。