ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第12章 夜風
その日、リンはクザンに呼ばれた。
「もー、インペルダウンに一回くらいはちゃんと正面からいきなさいよ。来てないって言われたんだから」
「あ、ごめん」
「で、今日は制服をちゃんと着てもらうよォ」
「え、やだ」
クザンはぽりぽりと頭を掻く。
「今日が何の日か…」
「昨日聞いた。だけどクザン、私は疑問だ。私なりに白ひげに関する風を追ったけど、白ひげは消し去っていい奴なのか?海賊王の子と言うだけで私たちとなんら変わらないエースを消していいのか?海賊だから?海賊だから消すのか?」
クザンは目を閉じた。
「…あと30分後に出る。制服を着ろよ。おれの側に控えるんだから下の奴らに示しがつくようにな」
リンはクザンを睨む。
「質問の答えになっていない」
「…仮に、おれがリンの満足する答えを言ったとして、お前に何ができる?風向きは簡単に変えられても、流れってモンはそう簡単にはえれねェもんだ」
「確かにそうかもしれないけど、その背中にある正義は何なんだ。正義とは何なんだ。ここに連れてこられてから、私はよくわからない」
リン自身、クザンの言ったことは正論だと思った。でもやはり、わからないことはありすぎる。
クザンも、リンの言おうとしていることがわからないでもなかった。
「お前、海軍入りゃいい兵になるな」
「私は正義なんて背中に背負いたくないんでね」
リンは与えられている部屋に戻り仕方なく制服を着る。
海軍将校用のため、しっかりとした制服だった。
「…こんな堅苦しい格好いつぶりだろ」
ポツリと呟く。髪を後ろで一つに縛っていたのを少し高く縛り直し、キュッとネクタイを締め、正義と背中に書かれた上着を袖を通さずに羽織り、再びクザンの元へ行った。